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建設論評・ビジネスモデルの変換点
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>米フェイスブックが実施しようとしている「リブラ」。全世界でフェイスブックのメッセージ機能を用いることで、簡便に送金ができる機能を目指している。既存の金融機関のビジネスをなくしかねないモデルということで、米政府で大きな話題となっている。
ICTやAIを利用して、ビジネスモデルを大きく変える事例は、他の分野でも続く。
シェアオフィス世界ナンバーワンの「WeWork」も、単にスペースを売るのではなく、ここで得られた世界中の個人データを分析し、保険の販売や顧客分析に活用しようとしている。これも新たなデータビジネスの導入によるビジネスモデルの変革だ。
コマツは、世界56万台の建機をリモート監視できる「コムトラックス」で有名だが、これに加えて、既存の建機にも使える「レトロフィットキット」を導入する。既存の建機をICTで賢くしようというものだが、待てよ、新しい機械が売れなくなるじゃないか。コマツは建機を売るメーカーから、他メーカーも含めた全世界の建機データを加工し、データ分析を売る企業へとビジネスモデルを変えようとしている。
国全体でビジネスモデルを変えようとしているのがシンガポールだ。2015年から床面積5000㎡を超える建物は建築確認申請で意匠、構造、設備のBIMのモデルデータを義務付けるとともに、全国土(東京23区の面積とほぼ同じ720km2)の3Dモデルをスマートフォン、タブレット、PC、AR(拡張現実)・VR(仮想現実)端末などのデバイスで閲覧できる「バーチャルシンガポール」を実現している。道路工事を行う際は、工事の情報やシミュレーション結果、進捗状況などを複数の官公庁で共有できる。
そのため、異なる機関が同じ場所で工事を予定している場合は、工事を同時に進めるなどの柔軟な対応が可能だ。車や人が混み合うことなく通行できるルートを算出することで、最も渋滞が起きづらい形で通行止めの場所と時間も決められる。また、デジタル化で「デジタルによる設計」「デジタルによる資産、工程管理」「デジタルによるプレハブ化」「デジタルによる建設」の4要素を取り入れたインテグレーテッド・デジタル・デリバリーにより、生産効率を30%程度改善しようというものだ。
英国規格協会では、BIMレベルを3段階に分けて提案しているが、シンガポールでは既にBIMレベル3(共通のBIMモデルを関係者間全員で運用するレベル)に向かっている。日本の現状はBIMのレベル1(2次元と3次元の組み合わせによって設計図書を作成するレベル)か。
BIM・CIMの進化は相当なスピードで進む。これまでの紙ベースでの意思決定システム、組織構成が全く変わり、建設の生産プロセスがデータやICT、AIに依存した形で、大きく変わる。その時、これまでのビジネスモデルが成立するのか、それとも新たなビジネスモデルへの変革が必要なのか、そろそろ大きな変革に向けた備えが必要な時期にきているのではないか。いまから10年後、20年後の未来を見据えてほしいものだ。(隆)
残り50%掲載日: 2019年8月7日 | presented by 建設通信新聞