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  • 連載・激動/専門工事業どう乗り切る(上)

    【「あせりと疎外感」でいら立ち/相次ぐ施策、情報収集と対応に遅れ】

     

     専門工事業は、技能労働者の確保を目的とする処遇改善が本格化するいま、その先駆け的取り組みの「社会保険未加入対策」が始まった当時とは違う思いを感じ始めている。にわとりと卵に例えられた職人の社保加入負担は、元請けか下請けかの議論は横に置き、当時の専門工事業団体トップが「われわれはルビコン川を渡った」と宣言した高揚感はいまはない。顔色と発言でいま目立つのは疲労感だ。6月から7月にかけ全国各地で開かれた建設産業専門団体連合会(才賀清二郎会長)と国土交通省本省、各地方整備局との意見交換会を通じて、専門工事業経営者の本音を探る。

     

     専門工事業界が昭和から平成の時代にかけ悲願としてきた「法定福利費の別枠計上」は、専門工事業界、元請各団体、国土交通省など行政も一体となった、社会保険加入促進の取り組みによって現実味を帯びることになる。社保加入は健全な建設産業の再構築と技能労働者(職人)の確保・育成が目的で、行政の積極的支援態勢は、建設キャリアアップシステムなど後に続く政策にも引き継がれた。

     

     公共工事の積算でまず事業主負担分を積算計上、その後は社保加入分計上と景気好転に伴う労務費上昇などを理由に、公共工事設計労務単価が上昇を続ける中、職人らの社保加入は製造業並みまで近づくことができた。

     

     さらに社保加入の動きを決定付けたのは、入札制度を通じた未加入企業排除と、建設業法で未加入企業の許可・更新を認めない改正、いわゆる新・担い手3法の施行だ。

     

     実際、ある専門工事業団体関係者は、これまでの行政による社保加入指導・勧告、入札制度を通じた排除などの対策を念頭に、「行政の積極的な後押しが(社保加入推進に)効果的だった」と評価。その上で、「下請けが元請けに対し訴えてきた、法定福利費の別枠計上の必要性と理解促進も社保加入の推進力になった」と、職人、下請け、元請け、行政の連携強化が産業の再構築と担い手確保・育成へ向けた好循環の流れが生まれていると指摘する。

     

     にもかかわらず、建専連と国交省との今年度意見交換会で、建専連幹部の顔色と発言に疲れといら立ちが見えたのはなぜか。

     

     ある団体トップは専門工事業界の疲れといら立ちの理由を「あせりと疎外感」と断言する。専門工事業は、担い手の確保・育成を主眼にした社保加入で建設産業の主役に躍り出た。しかしその主役の座は、経済界と労働組合が残業時間の上限規制で歴史的合意した結果、一気に進んだ働き方改革や海外展開、さらには政府が目標を掲げた現場の生産性向上などでかぎを握る「元請け」やITなど技術革新を担う「他業種企業」に移った。

     

     実は社保加入を重点課題として専門工事業界が取り組んだこの数年間、建設産業界は激動にさらされていた。

     

     「生産性向上への挑戦」と銘打った2015年8月には、建設キャリアアップシステムの原型である就労履歴管理システム構築へ向けたコンソーシアム設置以外に、元請けの現場生産技術革新を促す役割となった第四次産業革命へ向けたビジョン作成議論も開始。16年9月には働き方改革実現会議の初会合、17年6月には現場生産性2割向上を盛り込んだ未来投資戦略を政府が決定、18年3月に労使が残業時間上限規制で歴史的合意を果たし、5月に海外インフラ展開法、7月には働き方改革関連法、ことし6月には新・担い手3法がそれぞれ成立した。

     

     しかし専門工事業界はこの数年間、日本の産業全体に影響を与える国策による技術革新導入と働き方改革、外国人材拡大という大きなうねりに対し、情報収集と対応に遅れが出始めている。

     

     一部専門工事業団体トップが感じる「あせりと疎外感」は、政策・施策のスピードと多様化・複雑化が背景にある。

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    掲載日: 2019年8月22日 | presented by 建設通信新聞

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