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  • 技術裏表/日特建設・立命館大・JAXA/月面探査研究で地盤掘削を進化

    【アースオーガで硬さ、深度を推定/19年度中の試験適用を視野】

     

     日特建設は、立命館大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、月面と地上の両方で活用できる新たな地盤調査技術の研究を進めている。杭基礎工事などで使用するアースオーガで地盤の硬さや掘削深度を推定する技術で、2019年度中に工事現場での試験適用を視野に入れている。担当する同社の宇次原雅之技術本部副本部長は「地球上の地盤で培った特殊土木技術の力を生かし、月面開発というビッグプロジェクトに対して地球上から少しでも貢献できれば」と語る。

     

     月面には、多くの資機材を持ち込めないため、高い効率性が求められる。地盤調査もその1つで、スパイラルオーガで月面地盤を掘削しつつ、オーガ掘削時の抵抗力から地盤の強度も推定する探査手法の開発をJAXAと立命館大が進めてきた。スパイラルオーガは、地球上では杭基礎などに活用する技術で、月面向けに研究してきた技術を使えば、杭の根入れ深さを確認しながら施工する技術に生かせるのではないか。こうした発想のもと、JAXAの宇宙探査イノベーションハブの仕組みを活用し、「アースオーガ掘削情報による地盤推定のシステム化検討」をテーマとした日特建設・立命館大・JAXAの3者の共同研究が始まった。

     

     地盤強度を推定するためには、オーガ掘削の際に刃先に掛かる力(回転トルク)を測る必要がある。油圧にかかる力で測ることができるものの、小さい値までは計測するのが難しかった。共同研究では、オーガ掘削の際に、刃先にかかる回転トルクを精度良く計測し、既存の「平刃による地盤掘削時の力学的釣合い式」から導いた地盤定数式を使って地盤定数を推定して地盤の強度を評価する方法を開発する考え。宇次原副本部長は「杭基礎施工時の支持地盤の推定や改良地盤の強度確認など、地盤強度の確認という地上でも課題となっていることの解決に貢献できれば」とする。

     

     月面での適用に向け、月面に存在する砂質土を模した試料(月土壌シュミラント)を使った室内試験をJAXAと立命館大が進め、地球上での適用に向けた室内試験は立命館大と日特建設で、それぞれ進めてきた。

     

     その成果を踏まえ、掘削している深度を計測する「原位置地盤計測システム」を新たに作製。0.28㎥のバックホウをベースに、リーダ、オーガモーター、昇降モーター、回転トルク変換機などを取り付け、実際の工事を想定して削孔径200mm、掘削深度10m程度の仕様とした。最終的には、掘削深度20m程度までの試験も想定している。

     

     実際の地盤での適用に向けた掘削試験は、同社の猿島総合センターで実施している。事前に地盤の強度条件を把握した上で、原位置地盤計測システムの掘削データで推定した地盤強度と比較し、推定精度を判定する。宇次原副本部長は、「地上は地質が複雑で、現場によって掘削径の違いや地下水という条件も変わる。室内試験での理論が多様な条件でも適用できるか、確認するのが難しい」と話す。

     

     実地盤を対象とした掘削試験の結果を立命館大・JAXAと共同で解析を進めており、今後は適用性の確認、推定精度の確認などを進める予定だ。19年度中には工事現場での試験適用を視野に入れており、「地質の複雑な現場でうまく適用できるか試したい」(宇次原副本部長)という考えで、「将来的には通常の杭施工機からも精度良く地盤の硬さを推定できるようにしたい」(同)と先を見据える。

     

     月と地球。環境がまったく異なる世界だが、人間が機械を扱うという意味では違いはない。月と地球のために開発した技術をお互いに還元し、進化し合う。月への旅路の夢が、人類の技術と歴史を変えていく。

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    掲載日: 2019年8月23日 | presented by 建設通信新聞

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