当サイトについて 採用ご担当者様
会員登録はこちら 求人検索

建設技術者向けNEWS

建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!

  • 現場から・宮崎218号平底トンネル新設工事/前田建設/地元に寄り添い溶け込む現場/祭りに参加、新聞も発行し進捗状況お知らせ

     宮崎県日之影町の静かな山間部で進む宮崎218号平底トンネル新設工事。国道218号高千穂日之影道路の一環となる自動車専用道路として九州地方整備局が建設を進めており、熊本県嘉島町の嘉島ジャンクション(JCT)から宮崎県延岡市の延岡JCT・ICに至る九州中央道(全長約95㎞)の一部になる。施工を担当する前田建設の北澤剛所長は、騒音や振動対策に細心の注意を払うとともに、地元に寄り添って工事を進めている。

     

     国道218号はかつて、五ヶ瀬川沿いを縫うように走り、車のすれ違いも難しかった。その後、1995年に日之影バイパスが整備され利便性は向上した。今回の高千穂日之影道路は、災害発生時に国道218号の代替道路となり、宮崎県北地域と熊本方面を結ぶ唯一の緊急輸送道路一次ネットワークとして機能する。北澤所長は施工に当たり、「重要な道路であっても再び環境が変わる。住民の警戒感や疑心暗鬼を払拭するよう地元に溶け込むことを心掛けた」と振り返る。

     

     具体的には、2016年2月の工事契約後、着工前から日之影町関連の行事に合計24回参加している。最初は祭りへの参加や設営、後片付けの手伝いをしていたが、恋和神チャリティーコンサートや深角団七祭りではリコーダーアンサンブルを演奏した。北澤所長が若手職員に「何かやってみよう」と声をかけ、子どもの頃から馴染みのあるリコーダーを演奏することにし、事務員の田丸春香さんもキーボードで加わった。レパートリーも増え、「作業所の一体感を高めることにつながっている。職員の結婚式では余興として演奏した」(北澤所長)と話す。

     

     駅伝大会にも出場、19年には3位に入賞している。ソフトボール大会には地元と混成チームを結成して出場した。平底出身の佐藤貢町長もチームに入り、18年の大会では優勝した。このほか、現場見学会は34回に達し、参加延べ人数は1000人を超えている。

     

     毎月発行している『平底トンネル新聞』も反響を呼んでおり、第31号になった。300部を町役場の回覧で住民に届けている。「伝えたいのは工事の進捗状況。ただ、硬いことばかりでは読まれない」(北澤所長)とコラム欄を設けている。作業所内で抽出した時事ネタを基に原稿を執筆している郡山卓也係員は、「現場や買い物に行くと住民から声をかけられる」と、顔馴染みになっている。田丸さんが担当する「今月の花」のコーナーも人気だ。

     

     前田建設のこのような取り組みに、九州地方整備局延岡河川国道事務所の平野智志建設監督官は、「道路の新設は周辺環境を大きく変えるため、現地への入り方を間違えると後々苦労する。地元から応援していただける工事は発注者としてもありがたい」と感謝している。

     

     工事概要は長さ1665m、幅12.0mのNATM。掘削する坑口から1050mの地点に昭和初期に建設された用水路トンネルがあり、約8.7m上部で交差していた。施工に当たっては、この用水路トンネルへの影響を最小限に抑えるため、通常は一段発当たり0.25秒間隔の発破を0.025秒間隔にして発破振動制御(EDD)とリアルタイム振動計測を行った。その結果、「設定値の60%の振動に抑えることができた」(北澤所長)。

     

     掘削後の鋼製支保工の設置も、通常は4人で切羽立入り作業するところを無人化での試験施工を行った。古河ロックドリル、マックと共同開発したもので、安全性向上に大きな効果が期待できる。周辺環境にも配慮し、仮設ヤードと民家が近接しているため、ずり出しを延伸ベルトコンベアで行い、重ダンプの通行による騒音などを避けた。

     

     現在はトンネルの掘削が終わり、覆工工事も1418mまで進んでいる。進捗率は90%を超え、20年1月末に完成の予定だ。 

    残り50%
    ログインして続きを読む 会員でない方はこちらよりご登録ください

    掲載日: 2019年9月9日 | presented by 建設通信新聞

前の記事記事一覧次の記事