当サイトについて 採用ご担当者様
会員登録はこちら 求人検索

建設技術者向けNEWS

建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!

  • 建設論評・上役を評価する時代

     日本の建設会社J社が、米国で現地の建設会社A社とJVを組んで建設工事をしたことがあった。ともに両国を代表する大手で、スポンサーを務めるJ社から所長を、A社から副所長を出した。両社の従業員が混然一体となって全体を共同施工する甲型JVだった。つまり、日本人の所長が米国人をも部下にした職場だった。

     

     すると、年度末にA社の本社から、自社の従業員の人事評価を所長に依頼してきた。J社の人間がA社の従業員を評価することになったわけである。

     

     彼はそれまで他社の従業員を評価した経験が一度もなかったので、A社に問い合わせて事情を理解した上で、A社の規則に従って人事評価を行うことにした。A社の規則では、所長が各人の評価を行った後、当人たちにその評価を提示する。そして、当人がその評価に納得して承諾の署名をしたら、本社へ提出することになっていた。

     

     提示の結果、数人が評価を承諾しなかった。所長は当惑して副所長に相談した。副所長は既に所長経験があり、所長の心構えとして従業員たちの日ごろの勤務ぶりを記録していた。所長は、副所長の助けを得て説得に努めた。事実を突きつけられると従業員たちは異を引っ込め、その評価に承諾の署名をしたそうだ。評価には、評価される者に対する説得力を備えるべきなのだ。米国の会社では、こうした非評価者同意評価方法が一般的なのだそうだ。

     

     J社の本社からも自社の従業員の人事評価の要請が所長の元に届いた。その日本人従業員たちを、恒例のごとく一方的に評価した書類を本社に提出した。

     

     彼が日本の会社における評価の実態を明かすと、米国人たちは、そんな一方的な評価だったら誰にでもできる、部下にとっては、納得できる評価をされているからこそ上役を信頼して仕事に励むことができるのだ、と主張した。

     

     数日してA社の本社から別の書類が届いた。そのJV現場を担当しているA社の本社の責任者を評価する書類だった。つまり、現場所長が本社の上役を評価するのである。彼は非常に驚いたが、指示に従って評価した書類を返送した。これも米国では一般的なのだそうだ。

     

     この米国流の評価制度に接すると、日本の建設会社でまかり通っている直属の上役が従業員を一方的に評価する直属一系方式は疑問符が付く。頑迷(がんめい)的であまりにも固陋(ころう)的、と感じるのだ。

     

     折からわが国では、政府が今秋から人事評価の制度を拡大すると全国紙が伝えている。

     

     名付けて「360度評価」。

     

     上役が部下を一方的に評価する従来型の人事評価ではなく、上役、同僚、部下など立場が異なる複数の関係者が対象者を評価する制度だ。部下を指導するマネジメント能力の向上を促し、ハラスメントの抑制防止にもつなげるのが狙いだそうだ。

     

     守旧的、事大的、権威主義と形容されてきたお役所のこの動きについて、民間の建設会社の社長、上役、人事の幹部の認識を問いたいものである。(小)

    残り50%
    ログインして続きを読む 会員でない方はこちらよりご登録ください

    掲載日: 2019年9月12日 | presented by 建設通信新聞

前の記事記事一覧次の記事