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現場を担う/ゼネコン×職長/東武伊勢崎線竹ノ塚駅付近連立事業(東京都足立区)
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>◇厳しさ持ちつつ綿密に作業/楽しさや憧れも大切に
東京・足立区が進めている「東武伊勢崎線(竹ノ塚駅付近)連続立体交差事業」。駅舎部分を含むIII工区を担当する鹿島・東武谷内田建設・熊谷組・東鉄工業JVは、綿密な施工計画の下で緊張感を持って作業に当たっている。鍵になるのはメンバーのチームワーク。時には厳しい言葉も発しながら、難工事を一歩一歩前進させている。
2005年3月、竹ノ塚駅に近接する踏切で死傷事故が発生した。都内有数の「開かずの踏切」として知られ、危険性を懸念する声があった中で痛ましい事故が起き、東京都や足立区、東武鉄道ら関係者は抜本的対策の検討を加速。区施行の連続立体交差事業として事業化され、12年11月に起工式が開かれた。全体の事業区間は約1・7キロで、このうちIII工区の延長は358メートル。22年3月の踏切解消を予定している。
同駅周辺は急行線と緩行線が多数行き交う区間で、鉄道運行を維持するには何度も線路を切り替えなければならない。鹿島JVは現在、上り方面の高架橋の構築作業などを昼夜で進めている。一つの作業の遅れは他工区にも影響を与える。鹿島JVの江口元所長は「現場では相当厳しい要求をしなければいけない」と話す。
そうした中で奮闘するのが鹿島の蔦尾亮太氏だ。入社4年目で工程管理や調達を担当しており、「地域の人に役立つ仕事をしたかった。大変な部分はあるが、それ以上の達成感がある」と笑顔で話す。躯体作業を率いる東友建設の大村克義職長は「(蔦尾氏は)分からないことをどんどん聞いてくる。吸収するのが早い。現場で助けられている」との受け止めを話す。
大村氏は、年上の知人に声を掛けられて土木の世界に入った。「最初は興味がなかったが、誘っていただいた方に追いつきたいという気持ちに変わり、どんどんのめり込んでいった」(大村氏)。仕事への努力が評価され、特に優秀な職長に与えられるスーパーマイスターに異例のスピードで選ばれたという。「自分一人の力ではなく、支えられてここまで来た。踏切事故が起きてしまうような事態を無くして、近隣の方が住みやすくなる街にしたい」と大村氏。温和な性格の調整役として、現場を引っ張っている。
鉄筋工を率いる大広工業の吉田優職長は、収入に魅力を感じて業界に飛び込んだ。最初は言われたままに作業をこなす日々が続いたが、仕事を覚えて現場を取り仕切るようになるにつれ、面白さが増していった。吉田氏は「工程を前倒しにできた時や、難しい組み立てをきれいに仕上げた時に、大きなやりがいを感じる」と話す。「仕事に強いこだわりがあり、若い社員に厳しいことをはっきり言ってくれる頼れる職長」というのが江口所長の評だ。
元請の蔦尾氏と、大村氏や吉田氏ら職長が信頼関係を築けているからこそ、綿密な作業を着実に進めることができている。江口所長は「普段からコミュニケーションができていないとうまくいかない。例えばプロスポーツでも、厳しいことを基本にしている中で楽しさを感じられるチームがある。現場は厳しく、人間関係は楽しくをモットーに進めている」と話す。
担い手の確保が大きな課題となっている中で、大村氏は、小さい子が憧れるような職場にしていくことが大事だと感じている。「なあなあではいけないが、常に楽しく仕事をしていきたいという思いがある。小さい子たちが現場を見て『生き生きと楽しそうに仕事をしているな』と思えば、自分もやりたいと思ってくれる」(大村氏)。
蔦尾氏が気になっているのは、建設業の仕事の知名度だ。「小さい時に建設業界のことを知らなかった」と振り返った上で、「現場の仕事を誰でも知っているという状況になれば、若い子たちは来てくれるのではないか」と話す。8月27日には「鹿島サマースクール2019~本物の建設現場を見に行こう~」と題した子ども向け見学会を実施した。「格好良かった」「また来たい!」とうれしそうに話した児童もいた。そうした積み重ねが重要と感じている。
吉田氏は、経験や体力に応じた働き方が重要とみる。50代や60代になると、どうしても体力が落ちてくるのが現実だ。「年を取って思うように体が動かなくなったらどうなるのか不安がある」と吉田氏。ベテランは登録基幹技能者などの資格を持っていて、豊富な経験もある。吉田氏は「現場に出て体を動かすだけではなく、管理など裏方でも仕事ができることが確定されていたら、入ってくる人がいる」との認識を示す。
江口所長は「当現場は竹ノ塚駅からよく見える。ライブの広告のようなものだ。ホームからの見た目も気にしながら、建設業の魅力を感じてもらえるようしっかりと工事を進めたい」と話している。
残り50%掲載日: 2019年10月2日 | presented by 日刊建設工業新聞