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2017年重大ニュース/政策強化が産業構造の転換促す
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■明日の建設産業へ/関連制度を再構築
10年後の建設産業が「生産性」を高めながら「現場力」を維持していくために--。その目的意識を持って、関連制度の基本的な枠組みを検討してきた国土交通省の建設産業政策会議が7月に最終報告となる提言『建設産業政策2017+10』をまとめた。
「あなたは若い人たちに明日の建設産業をどう語りますか」という問いかけで始まる提言は、建設産業にとって、最大の課題となっている「担い手の確保・育成」を意識しながら、それを支える「働き方改革」「生産性の向上」を強く打ち出している点が特徴。10年後を表す“+10”に将来に対する思いを込めた。
【設計労務単価】
■4年連続で/前倒し改定
国土交通省は、「公共工事設計労務単価」を4年連続で前倒しして改定した。通常は4月となっている改定を3月1日から適用。2017年度予算に当初予算として初めて「ゼロ国債」を設定するなど、政府を挙げて公共事業の平準化に力を入れる中で、16年度第3次補正予算の関連事業への適用を念頭に前倒した。
全国の全職種平均(単純平均値)の伸び率(16年2月比)は3.4%。単価の上昇が始まった12年度と比較すると、39.3%の増加になる。今回の改定によって、ピーク時(1997年度)の94.5%の水準にまで回復した。
【専門工事業者の新評価制度構築】
■企業の施工能力/見える化へ調査
国土交通省は、専門工事企業の施工能力などを「見える化」(評価)する仕組みの構築に向けた調査・検討に乗り出す。2018年度予算に専門工事企業に関する評価制度の構築に向けた検討として新規に1900万円を計上。国が評価の項目や手法についてのガイドラインを作成し、評価主体となる各専門工事業団体が特性に応じてガイドラインをアレンジして使用する。
評価項目は所属する技能者の情報や施工実績、社会保険等への加入状況など。技能者の保有スキルや経験などを業界統一のルールで蓄積していく「建設キャリアアップシステム」との連動も見込まれる。
【社保加入が本格化】
■直轄は全下請け/加入業者に限定
建設産業の社会保険等の未加入対策は、2017年度に目標年次を迎え、加入の徹底あるいは促進という新たな段階へと移行した。4月から直轄工事を対象にすべての下請業者を社会保険等への加入業者に限定、10月からは未加入の場合の元請企業に対するペナルティー適用を開始した。
支払いを担保するための制度的な対応として、受注者が発注者に提出する請負代金内訳書に法定福利費を内訳として明示することを新たに規定。都道府県・政令市など公共発注者や不動産協会など民間工事の発注者団体、建設業団体にも周知し、法定福利費の確保に対する意識を根付かせる。
【設計報酬基準見直し】
■増大する標準外業務/リスト化して明確に
国土交通省は12月、建築設計・工事監理等の業務報酬基準(告示15号)の改正方針を中央建築士審査会に示した。増大する標準外業務をリスト化して明確にするほか、基本設計と実施設計、意図伝達の各業務量の標準的な比率を目安として明示し、そこから前倒しや後ろ倒しによって増大する部分を標準外業務に位置付ける。大規模化や複合化などに対応した業務量の算定方法も見直す。これらの方針に基づき、実際の業務内容や業務量を把握するための設計事務所アンケートを来年2月から4月にかけて実施。これを分析した上で来夏には改正案をまとめる予定だ。
【建設キャリアアップシステム】
■登録料、利用料/11段階に区分
国土交通省や建設業振興基金、建設業団体などで構成する「建設キャリアアップシステム運営協議会」は、事業者の登録料や利用料といった料金体系を決定した。5年ごとに事業者が負担する登録料は企業の規模によって11段階に区分。資本金別に段階をつけ、一人親方や中小企業の利用に配慮した。事業者の利用料は、ID利用料(1ID=2400円)と現場利用料(1回=3円)の2種類。利用の頻度に応じて負担する形となる。
技能者の登録料はウェブ登録が2500円、郵送や窓口による発行は3500円。IDカードの有効期間は10年間となっている。
【120年ぶり民法改正】
■法定利率引き下げ/年3%の変動制に
ことしの通常国会で、企業や消費者の契約ルールを定める債権法に関する改正民法が成立した。民法制定以来、約120年ぶりに債権部分を抜本的に見直した。改正は約200項目にもおよび、公布から3年以内に施行する。
改正の柱の1つが、当事者間で特に利率を定めていない際に適用される「法定利率」の引き下げ。現在、年5%で固定されている法定利率を年3%に引き下げ、3年ごとに見直す変動制も導入する。また、事業者が不特定多数の顧客との間で取引をする場合に示す定型約款規定を創設した。顧客の利益を一方的に害する条項は無効となる。
【独禁法改正の動き】
■課徴金減免見直し/公取委が裁量判断
公正取引委員会が11月に独占禁止法の課徴金制度見直し方針案を明らかにした。課徴金減免制度は固定だった減免率や対象企業数を一定範囲内の中で公取委の裁量判断で決められるようにする。減免率は一定の幅を持たせ、その範囲内で決める。裁量判断の一環で「継続的調査協力義務」を新設する。一方で調査妨害には課徴金を加算する。申請順位だけでなく、調査への協力度合いも判断して減免率を定める。課徴金算定期間は3年から10年に拡大する考え。早ければ2018年の通常国会に独禁法改正案を提出する。
【i-Con本格化】
■ICT施工が拡大/地方自治体に浸透
先行的に取り組んできた土工から、舗装工や浚渫工へと工種の拡大を図るなど、ICTを駆使して建設現場の生産性を高める「i-Construction」の本格化を印象づける1年となった。
ベストプラクティスの全国的な普及を目的に『i-Construction大賞』も創設。12月に最優秀賞(国土交通大臣賞)として砂子組(北海道)とカナツ技建工業(島根県)を選定した。
都道府県や政令市といった自治体にも取り組みの裾野が広がってきていることから、自治体工事を主戦場とする中小企業への支援が求められる。
※働き方改革の取組、各業界に浸透
【コンサル・設計】
■大手の社内ルール/整備・運用が加速
建設業とは異なり、コンサル・設計分野は5年間の猶予期間がないため「働き方改革」は喫緊かつ不可避の課題となる。特に大手設計事務所では長時間労働の是正に向けて一定時間以降の残業禁止や日曜出勤の原則禁止、ノー残業デーの実施といった社内ルールの整備・運用が一気に加速した。労働時間の短縮は必然的に設計生産性や業務効率の向上へと意識を促す。ICTやBIMなどの活用は社内外で情報の伝達・確認・共有の徹底を図る上でも不可欠であり、より働き方の自由度を高め、介護・育児、在宅勤務に対応できる職場環境づくりも本格化しつつある。
【設備】
■電設協と日空衛/行動計画策定へ
設備工事業界でも、日本電設工業協会(後藤清会長)と日本空調衛生工事業協会(長谷川勉会長)が、働き方改革の実現に向けた行動計画の策定に乗り出すなど、業界を挙げた動きが相次いだ。両団体とも、2017年度末までには方向性を示す見通しだ。
働き方改革を支える会社制度の改定やモデル現場での課題抽出など、個社での取り組みも進展しているが、設備工事会社は下請けに入ることも多く、ゼネコン側との連携が欠かせない。とりわけ繁忙度が増す中では、建築工程の遅れに起因する後工程へのしわ寄せ問題をいかに回避・解決するかが当面の焦点となる。
【専門工事業者】
■技能者の社員化/月給制を積極推進
建設業界の働き方改革が加速する中、専門工事業の動きも活発化している。建設産業専門団体連合会(才賀清二郎会長)は9月の理事会で、週休2日制の推進に向け、技能者の直用(社員化)・月給制に取り組むことを決定した。
理事会後の会見で才賀会長は「適正な価格・工期について発注者の理解を得ながら、総合建設業団体とともに取り組んでいきたい」と決意表明した。政府の後押しもあり、発注者、総合建設業団体が週休2日の実現へかじを切る中、技能労働者の処遇改善や若手技能者の確保・育成、技能・技術が伝承できる環境整備を積極的に進める。
残り50%掲載日: 2017年12月28日 | presented by 建設通信新聞