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そこが聞きたい/米国オートデスク社AECインダストリー担当上級副社長 ニコラ・マンゴン氏
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【BIM発展の方向性は?/AI、IoTと連携 社会に浸透】
オートデスク主催の『Autodesk University Japan2019』(AUJ)では、BIMがAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)とつながる未来が提示された。米国オートデスク社のニコラ・マンゴンAECインダストリー担当上級副社長は、「BIMとIoTを融合することが将来的には重要になる」とした上で、リアルタイムの情報とBIMモデルがつながり、BIMが社会全体に浸透するとの考えを示した。BIMの発展の方向性などについて聞いた。
AUJでは、一定の条件を設定するとAI(人工知能)が条件の範囲で可能な無数の設計案を自動的に提示するソフト「ジェネレーティブデザイン」の有効性が紹介された。マンゴン上級副社長は「日本の建設業界は過去30年間、生産性がほぼ変わっておらず、テクノロジーを取り入れる動きはこれからだ。こうした環境下でこそ、ジェネレーティブデザインが必要になる。検討段階であらゆる設計のオプションを提示し、ベストなオプションを選択できるようになる」と強調する。
設計案の提示だけでなく、「建設現場に散らばっている大量のデータから、工程の遅れの程度や今後の予測、事故発生のリスクなどを見いだせる」とする。そのデータを引き出すのがIoTセンサーだが、データだけを集めても、使えなければ意味がないと話す。「BIMと連動すれば、集めた情報をシンプルな形で“見える化”でき、設備の故障予測といった建物の維持管理や、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で得た情報からテナントの稼働状況などを把握して賃貸契約に生かすといったことまでできるようになる」としたほか、「さまざまな場所にあわせた適切な温度などを判断してIoT機器で調整できるなど、BIMはモデル情報から室内環境と建築構造・設備との関連性を理解して必要な判断を下せる」と将来的に目指す姿を示す。
現実の建物や空間の環境をデジタル世界に再現する「デジタルツイン」を実現するのが将来的なBIMの姿という考え方だ。だが、デジタルツインは、現実世界の変化をリアルタイムでモデル上に再現する点に大きな課題がある。AIを活用すれば「AIがモデルの中で、情報が不足している部分を指摘したり、現実の室内環境が変化したことを察知して、モデルの情報不足を警告することが可能になるのではないか」という。
IoTとAIによってBIMは、建築生産プロセスのシステムにとどまらず、社会全体のインフラとして発展する可能性が見えてきた。一方で日本国内では、まだまだBIMへの対応に企業間でも温度差があるのは事実。「クラウドを駆使し、技術者が3Dモデルとさまざまなシステムをクラウド上でコラボレーションしている」という点が米国や英国、シンガポール、オーストラリアなど“BIM先進国”の特徴だ。日本では「計算ソフトなどたくさんのツールが開発されているが、BIMと統合しない限り、すべてのツールに同じ情報を再入力せざるを得ない」とBIMモデルへの情報統合の重要性を説く。
また、従来形を重んじ、細部を理解してから行動する文化的背景がある日本では「国土交通省が公共施設でのBIM活用を強力に打ち出したような規制措置を進めるという道もある」とした上で、「大手ゼネコンや建築設計事務所が率先して取り組み、テクノロジーの導入によって若者が産業に魅力を感じるきっかけにもなり、バリューチェーン全体への普及が加速するのではないか」と見通す。
残り50%掲載日: 2019年10月21日 | presented by 建設通信新聞