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  • スコープ/東日本高速会社、雪氷対策技術の高度化進む/凍結防止剤散布量など最適化

     東日本高速道路会社は雪氷対策の高度化に取り組んでいる。北海道支社管内では、衛星利用測位システム(GPS)の位置情報と凍結防止剤の散布装置を連動させた自動化システムを実用化。準天頂衛星を活用した雪氷対策車両の運転操作支援システムも実用化に向けて試作機での検証を進めている。利用者への安全で快適な走行環境の提供はもちろん、維持管理費用の削減や道路構造物の長寿命化、将来的な除雪作業従事者の不足に対応するため、技術開発を急いでいる。

     

     同社が管理する延長約3940キロの高速道路のうち、約7割が積雪寒冷地を通過している。走行環境を維持するため、冬季には塩化ナトリウムを主成分とする凍結防止剤を散布するが、その量は年間約16万トンに達し、散布剤による塩害が道路構造物の劣化要因になっている。

     

     同社は、塩害低減による構造物の長寿命化と散布量削減による維持管理のコストダウンを目的に、2009年からブリヂストンと共同で「凍結防止剤最適自動散布システム(ISCOS)」の開発に着手し、15年冬から北海道支社管内で実用化している。

     

     ISCOSは、同社グループの凍結防止剤自動散布装置や、走行しながらタイヤ接地面の情報(振動波形)を収集・解析して路面状態を高度に判別できるブリヂストンの独自技術(CAIS)などで構成する。

     

     トンネルや橋梁など道路構造に合わせ、凍結防止剤の「散布量」「散布幅」「散布開始・停止」といった作業内容を事前に登録。オペレーターは作業開始前に走行する「作業区間」をセットするだけで、巡回車に装着した特殊タイヤで路面状態(乾燥、半湿、湿潤、シャーベット、積雪、圧雪、凍結)を詳細に把握し、凍結防止剤の散布量・箇所をリアルタイムに最適制御する。

     

     北海道支社管内では札幌、岩見沢、旭川、室蘭、苫小牧、帯広の全6管理事務所で導入し、巡回車21台にCAISを搭載、運用している。管内では年間約3万トンの凍結防止剤を散布するが、ISCOSの導入で使用量を約7%削減できたという。今後は散布作業自動化に加え、除雪装置(除雪プラウ)の自動制御の開発を進めており、20年度には除雪車と凍結防止剤散布車のすべての作業・操作の自動化を目指す。

     

     除雪作業では、将来的な熟練作業員の高齢化や労働力不足が懸念されており、体制確保のための関連技術の高度化も急務になっている。そうした現状を踏まえ、オペレーターの負担軽減や除雪作業の効率化、安全性の向上を目的に、14年度から「準天頂衛星を活用した除雪作業車両の運転支援システム」の研究開発も進めている。

     

     同システムは、本線部の除雪作業で路肩に寄せられた雪を除雪するロータリー除雪車に搭載される。高精度測位システムに高速道路の高精度地図情報を組み合わせ、除雪車両の正確な位置を運転席の車載モニターに表示。走行車線へのはみ出しやガードレールへの接触を回避するための位置情報をモニターに表示し、オペレーターの操作を視覚的にサポートする。

     

     運転操作が容易になり、除雪作業の省力化・効率化が図られるとともに、ホワイトアウトなどの視界不良時にも安全に作業できるようになり、除雪作業の安全性向上だけではなく、利用者へのより安全で安心な走行環境の提供につながることが期待される。

     

     北海道大学大学院の野口伸教授の技術協力を受け14、15年度にシステムを開発。実際の除雪車を使ったフィールド実証実験を16年度に行った。17年度には試作機を使った試験走行を始め、現在もモニター画面の改良などに取り組んでいる。本年度は道東自動車道夕張IC付近の夕張サービスセンター敷地内で試験走行を行う予定。この中で最終的な動作確認を行い、早ければ来年度から実用化する。

     

     東日本高速会社は将来的な除雪作業の完全自動化を視野に今後、高速走行(時速約50キロ)での除雪作業支援、ロータリー除雪車の自動操舵(そうだ)技術の開発にも取り組む方針だ。

     

     雪氷対策作業に必要な人数や機械の台数・配置などの実施体制や作業開始のタイミングなど、一連の工程を適切に指示できる人員の減少を見据え、人工知能(AI)による判断支援システム構築に取り組んでいる。グループのネクスコ・メンテナンス北海道とウェザーニューズの共同研究で本年度までに同システムのプロトタイプを構築し、作業指示者の判断結果などをシステムに学習させながら、20年度の運用開始を目指している。

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    掲載日: 2019年10月24日 | presented by 日刊建設工業新聞

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