建設技術者向けNEWS
建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!
-
2018本社元旦号(20)
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【乗り越えろ 7つの課題-(4)問答無用の時間外労働時間適正化-】
■設計・コンサル/時間を有効利用しクオリティー向上/女性が働きやすい職場づくり進む
働き方改革推進法案の施行が2019年4月に迫る中、建設産業界全体の中で建築設計事務所の働き方改革への取り組みは遅れていたと言わざるを得ないだろう。特に長時間労働の抑制と多様な働き方への対応、労働時間等の設定改善に関する特措法の改正が求められる中、「時間当たりの生産量は注文内容や担当者の能力で大きく異なり、一律のルール適用は困難」(地方大手組織設計事務所)という指摘も聞こえてくる。ある大手組織設計事務所のトップは「これまでの建築設計事務所の働き方が否定されかねない」と懸念を示しつつも「法は順守していく」と、建築設計事務所のあるべき姿を模索する。
働き方改革の遅れの根底は「設計事務所の業務は注文生産かつ特注品。生産工場は担当者の頭の中にある」(地方大手組織事務所)という考え方ではないだろうか。「設計のやり方まで踏み込む必要がある」と、設計の生産性向上と一対の取り組みとして試行錯誤が続いている。
こうした中、法改正を好機ととらえ、働き方改革についての議論をワークショップ形式で始めたのは佐藤総合計画だ。「ポジティブな意見を集め、業務の効率化と所員の自主性を育む」とボトムアップで新たなシンクスタイルの構築を目指す。
労働時間の縮減に向けた取り組みでは、大手組織設計事務所を中心に、PCなど機器の強制終了や厳格な承認制による残業時間の縮減、休日出勤禁止が本格化し、過重労働の防止に一定の効果を発揮している。これに合わせてフレックスタイムの導入や朝型勤務制度の奨励など1人ひとりに適したワークスタイルの構築が試みられてもいる。日建設計では、職員自ら時間の使い方を考える“時間デザイン勤務制度”を導入。3カ月先、1カ月先、週ごとの働き方を上司と相談・報告して決めることで、より緊密なコミュニケーションが業務の手戻りを防止し、「効率化とクオリティーの向上にもつながっている」。
また、梓設計は年間120日の休日に加え、年次有給休暇制度や長期連続休暇制度を整備した。毎月最終金曜日のプレミアム・フライデーも社内に定着しつつあるという。
その一方、設計の生産性を高める取り組みにもさまざまな動きがある。ICT(情報通信技術)システムの一環で設計打ち合わせや定例会議など遠隔対応できるシステムを取り入れることで、久米設計では「移動時間が縮減し、クリエイティブな時間を確保しつつ、クライアントや施工者とのコミュニケーション向上に一定の成果を出している」という。日建設計は、提案書のドキュメント作成を全社的にサポートする“ドキュメントデザインセンター”を設立し、標準化や社内のナレッジシェアリングを進めて業務の効率を図っている。
こうした総労働時間を縮減しつつ、設計者の創造性と提案力を育む時間の確保に向けた取り組みは、まだ緒についたばかりだ。
* *
高齢化が進む建設コンサルタントの処遇改善と担い手の確保は深刻な課題だ。建設コンサルタンツ協会がまとめた白書によると職員の年齢別構成の最多は1995年が24-26歳だったのに対し、20年後の15年は43-45歳で、平均年齢も36.8歳から45.5歳に上昇した。特にベテランと若手の2極化が進み、中堅層が不足し、技術の継承、空洞化など将来の社会資本整備の維持や維持管理に重大な懸念が生じつつある。
近年は新卒採用者の4分の1を女性が占めている。その一方、同協会会員企業161社2万5090人の技術者に対し、女性技術者は11.4%、管理職に至っては技術者全体の1.6%にとどまっており、家庭と仕事を両立するワーク・ライフ・バランスに配慮した魅力ある快適な職場づくりや幹部への登用を始め、女性技術者の未来予想図を示すことも問われている。
発注者側にも女性技術者を積極的に活用する姿勢が求められる。国土交通省の各地方整備局では工事に比べて業務における女性活用の取り組みが遅れている。女性技術者の絶対数が少ないとはいえ、地方自治体を含めた官民一体で女性が活躍する環境を整備することも課題に挙げられる。
増える女性職員に対応して個別の企業や企業間連携による取り組みも目立つ。長大は、全国の女性社員が一堂に会する女性交流会を開催。オリエンタルコンサルタンツは女性社員自らが成長し、会社がそれをサポートすることを目的とした「Smile-3S活動」を展開している。
子育て世代の退職という現下の悩みについては、日本工営の事業所内託児所「N-Kids」を先行事例に、建設技術研究所と長大、ニュージェック、復建エンジニヤリング、八千代エンジニヤリングの5者による企業主導型保育所を共同設立・運用する動きがあり、着実に女性が働きやすい環境づくりに向けた動きが進みつつある。
残り50%掲載日: 2018年1月1日 | presented by 建設通信新聞