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プロジェクト・アイ/環状七号線地下広域調節池石神井川区間工事/施工は大成建設JV
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>◇ゲリラ豪雨対策、総延長13・2キロのトンネル構築
東京都西部で総延長13・2キロのトンネルを構築する巨大プロジェクトが進行している。首都圏を襲うゲリラ豪雨への対策として東京都が整備する「環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)」は、二つの既存地下調節池を連結して大量の雨水貯留容量を確保する。東京都内の主要幹線道路・環状七号線の地下約50メートルで、大成建設・鹿島・大林組・京急建設JVがシールドマシンによる掘削を予定している。
都は2012年、ゲリラ豪雨の多発を受けて中小河川の整備方針を改定した。改定ではこれまで1時間雨量50ミリ対応で進めてきた施設整備の基準を、区部で75ミリに引き上げた。整備方針の改定に伴い隅田川以西を流れる区部9流域と、多摩地域14流域の計23流域を対象に順次対策を実施し、被害軽減を図る。
環状七号線地下広域調節池は、既存の神田川・環状七号線地下調節池(延長約4・5キロ)と、白子川地下調節池(約3・2キロ)を連結する延長約5・4キロのトンネル式調節池。完成すれば総延長約13・2キロ、貯留量約143・2万立方メートルの巨大な地下調節池になる。神田川、石神井川、白子川の3流域での75ミリ降雨への対応力が向上する見込みだ。
連結トンネルは妙正寺川取水施設(中野区)にある既存の立坑を発進基地としてシールド工法で構築する。これと並行して発進基地から1・4キロ離れた位置に、維持管理用に面積186平方メートル、直径32メートル、深さ52メートルの中間立坑を新設する。
掘削に使うのは通常の約3倍の密度でビットを取り付けた外径13・45メートルの特殊なシールドマシン。発進基地となる既存立坑の壁が厚さ2・9メートルの鉄筋コンクリート構造のため、硬い壁が切削できるよう強度や耐久性の高いマシンを採用した。白子川地下調節池でも施工管理を務めたシールド工事のエキスパート・大成建設の新井昌一作業所長が「シールドマシンで鉄筋コンクリートの全断面を削るのは初めて」と言うほど、前例が少ない工事だ。
工事は発進基地と中間立坑の2カ所で行われている。中間立坑ではニューマチックケーソン工法による立坑の構築、発進基地はマシンの組み立てが進んでおり、8月末時点の全体進捗(しんちょく)率は25%。発進基地では10月にマシンの組み立てが完了。20年3月に掘削を開始し、21年春には掘削の最盛期を迎える予定だ。工期が6年以上にわたる長丁場になるためハード、ソフト両面で作業の効率化に取り組み、工期短縮などを狙う。
ソフト面ではスマートフォンなどで使えるワークスモバイルジャパン(東京都渋谷区、石黒豊社長)のビジネス向けメッセージアプリ「ライン・ワークス」を活用する。管理者が複数のグループでメッセージのやりとりを確認。所長などの施工管理者が職長らによるメッセージを見て、連絡事項などの迅速な情報共有を図ったり、連絡漏れの防止を徹底したりしている。
ハード面では中間立坑の構築に遠隔操作を導入した。中間立坑整備に当たっての掘削は地下22メートルまでは人力で行い、23メートルより深い場所は地上のオペレーターが地下の掘削機械を遠隔で操作する。オペレーターの安全確保と作業効率の向上を図っている。
環状七号線は都内でも交通量の多い幹線道路の一つ。一方で作業所に面している環状七号線沿線には住宅地が広がる。作業に当たっては道路を通行する車両だけでなく、安全面で周辺住民への配慮も欠かせない。
周辺住民の安全を確保するため、中間立坑の作業所では敷地の南北に計画していた工事車両用のゲートを南側だけに変更。地元警察と協議を重ね、北側の住宅地に工事車両が進入しないようにした。環状七号線直下の工事では施工上のトラブルが交通に影響を与えかねない。「水圧や土圧などに注意しながら安全に作業を進める」と新井所長は気を引き締める。
工事は現在まで無事故無災害で進行している。新井所長は「できるだけ早期に完成させ、東京都民の治水の一翼になれれば。良いものを早く安全に引き渡したい」と力を込める。
【工事概要】
□工事場所=東京都中野区野方5丁目~練馬区高松3丁目
□規模・構造=シールドトンネル延長5367m、中間立坑1基、連絡管延長12mほか
□発注者=東京都建設局
□施工=大成建設・鹿島・大林組・京急建設JV
□工期=2017年3月9日~23年3月14日
残り50%掲載日: 2019年11月5日 | presented by 日刊建設工業新聞