当サイトについて 採用ご担当者様
会員登録はこちら 求人検索

建設技術者向けNEWS

建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!

  • 建設論評・建設受注の行く先

     先日(10月31日)発表された国土交通省の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)によると、9月の建設工事受注は総計で対前年同月比6.8%減少した。

     

     これを機会に最近の同統計を見ると、平成31年4月から令和元年9月までの建設工事受注は7月に前年同月比で増加した以外、他のすべての月で減少している。4-9月の半期累計で見れば、前年の半期に比べ7.6%減少している。

     

     やはり来年の東京オリンピック関係の特需が終わりつつあるのだろう。それにしては案外遅くまで需要が続いたと思う。もう少し早く減少に転じるのではないかという予想もあった。予想より長引いて需要が続いた原因は何かというと、需要規模が大きかったこともさることながら、実は施工能力が不足していたのではないかと考える。

     

     すなわち、施工管理に当たる者も、現場の作業をする職人にしても、現場関係者が全般的に不足している。施工能力が低いと、施工期間の長期化につながる。なかなか思うように短期間で工事が進捗しない分、積み残しの発注が多かったのではないかと思慮するのである。

     

     もともと建設業は、工期を短縮するために突貫と称して徹夜続きの工事をしたとか、明日の朝までに何とかできないかという要望に何としても応えたかったとかいった“武勇伝”に富んでいた。これは、作業に当たる職人の数も多かったし若かった上に、無理な工期を乗り越えて頑張ることが美徳とも思われていた時代背景があったからだと思う。

     

     それがいまでは働き方改革を政府主導で奨励する時代となり、どうやらお付き合いでは済まず本気で取り組まないと人が来なくなり、あるいは辞めてしまうという危機感が広く浸透してきているようである。人手不足を機に労働時間短縮に力を入れる、一見矛盾したかのような動きが世間を動かしている。

     

     国土交通省のデータで分かるとおり、これから建設需要が減少へ向かうことははっきりしてきた。一方には人手不足があったが、解消されるだろうか。あるいは、どこかでちょうど良い程度にバランスが保たれるだろうか。これまで生産の合理化を重ね、1人当たりの生産性を向上させてきた会社は、建設需要が減少してもそう困らない。なぜなら、建設業の根幹である現場の生産性向上を通じコストの引き下げが可能になっているからだ。

     

     また、建設需要の減少する今日を予想し、本業のみに頼らず周辺事業への進出を試みてきた会社も生き残れる可能性がある。技術開発に注力し、良きテーマに恵まれた会社も有望だ。しかし、いままで需要拡大の流れに乗り、好業績を謳歌してきただけの会社には辛いことになりそうである。

     

     遅かれ早かれ、コストの競争に生死を賭ける時代に戻るだろう。また、人手不足が解消されるかというと、そう簡単ではあるまい。コスト競争の結果、職人1人当たりの単価が下がれば、この業界から離れる者も増えるに違いない。不況であり人手不足でもあるという、厄介な時代が近付いているのではないか。

     (三)

    残り50%
    ログインして続きを読む 会員でない方はこちらよりご登録ください

    掲載日: 2019年11月11日 | presented by 建設通信新聞

前の記事記事一覧次の記事