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  • 連載・次世代建設経営戦略研究講座2019(5)~令和の時代の新たな持続的発展戦略を考える~

    【寄稿/次世代建設産業モデル研究所/所長 五十嵐 健氏/業務繁忙の中でしのび寄る企業体幹力の低下/トップ主導で自社のデジタル革命推進を】

     

     今年も台風の上陸で各地に被害がもたらされた。地球温暖化の進行に伴い、今後も国土強靱化に向けたインフラの整備は重要な課題になる。一方、ラグビーワールドカップを契機に、インバウンド需要はアジアから欧米・オーストラリアなど先進国型に転換しつつあり、今後もホテルやイベント施設などの建設・改修は進むだろう。

     

     そう考えると、国内の建設需要は一定量の継続が考えられる。一方、少子高齢化も進行するので人手不足の解消は進まない。世界的にゼロサム経済も続くので、コストに対する発注者の厳しい環境は今後も変わらない。

     

     その中で建設企業に忍び寄るのが、産業成熟化による体幹力の低下だ。この言葉に耳慣れない方もいると思うが、高齢化の進行により最近注目されている言葉で、経済用語としては組織力の経年劣化の意味に使われることが多い。

     

     建設産業は、失われた20年の間に身を削る努力を続けてきた。そして2013年以降の需要回復の中で、一転人材の確保とサプライチェーンの強化に努めてきたが、以前の体制回復までには至らない。この間ICT建機の導入や3次元計測の導入など生産性の向上に努めてきたが、それだけでは施工量増加への対応は十分でなく、不足する人材は非正規職員や新規入職者に頼らざるを得なかった。

     

     そうした努力もあり、課題であったオリンピック関連施設の期限内完成も果たし、世界からは驚異と称賛を持って見られている。一方、台風など自然災害の増加もあり、業界一体となっての「働き方改革」や「i-Construction」の推進にもかかわらず、その体幹力は低下傾向にあると認めざるを得ない。

     

     この状況を打開するためには、つながる5G(第5世代移動通信システム)時代に対応した「建設産業のデジタル革命」を一層推進するしかない。そのため、第2回で述べたように、昨年度よりクラウドシステムを活用した「i-ConstructionII」を始めた。これはクラウドシステムを活用して建設施設の設計から維持管理に至る全生涯情報を蓄積し、必要に応じ活用して建設活動全体の資産性向上を目指すもので、その活用に企業の今後の発展がかかっていると言っても過言ではない。

     

     企業にとって発展は不可欠で、発展がなければやがては滅びる。世界的なゼロサム経済環境もあり、コストに対する発注者の厳しい目は今後も変わらない。

     

     建設産業だけでなく全産業にとって、発展のためにはデジタル革命の推進は不可欠の条件であり、その取り組みいかんが企業の成長を左右する。昨今の金融界や製造業などでは、これまで堅実な経営に努めてきた名門企業が、体幹力の低下により突然衰退に向かうことも珍しくない。今その状況にあるのが、これまで製造業をけん引してきた自動車産業で、世界の名門企業が合従連衡の熾烈な争いを展開している。

     

     しかしその中でトヨタの豊田章男会長だけは、情報産業やイベント産業などの若い優秀な経営人脈を拡大しながら、1人世界中を飛び回っている。自動車産業はデジタル革命のただ中にあり、業態として製造業から情報サービス企業への転換を迫られているのだ。それが次世代の建設産業の姿にも重なる。

     

     若い人材はデジタル技術を活用する能力は体幹として持っているが、広く世界を見通し長期の視点でその戦略を考える知見はない。企業の中核を形成している幹部は、厳しいコストと品質競争の中で中期の経営を考えるのがやっとの状態だろう。その先を考えているのが豊田章男会長だ。今発展著しいGAFAMはそうした経営トップたちがけん引している。

     

     これまで集団力で成長してきた日本の建設業界でも、今こそ経営トップの戦略力を発揮すべき時ではないだろうか。

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    掲載日: 2019年11月13日 | presented by 建設通信新聞

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