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  • 建築へ/新しい建築士制度、20年度スタート/受験機会の早期化、実務要件対象拡大

     2020年度に新しい建築士制度がスタートする。建築士人材の安定的な確保を目的に改正された建築士法が20年3月1日に施行される。関係する政令や省令、告示も改正法とともに施行。これにより新しい制度での建築士試験が20年度に始まる。建築プロジェクトが多様化、高度化し建築士の役割や仕事の幅も広がっている。将来を担う世代の建築士の確保に向けた新たな仕組みを紹介する。

     

     現行の建築士法では建築士試験の受験要件として、学歴と実務の両方を課している。改正法では受験要件となっている実務経験を「免許登録要件」に変更。試験の前に求められていた実務経験が、原則として試験の前後を問わず免許登録までに満たしていれば良いことになる。これにより卒業後すぐに受験ができるなど受験機会の早期化が図れる。

     

     例えば現行制度は、建築に関する科目を履修した大学卒業者が1級建築士試験を受験する場合、卒業後に2年以上の建築実務の経験が必要となる。新制度では卒業直後から受験が可能。試験に合格した上で2年以上の実務経験を積むと、1級建築士として登録することができる。

     

     実務経験の対象業務も広げる。近年、既存ストックの有効利用や建築物の性能向上などが進められる中、建築士には単に設計・工事監理を担うだけでなく、「建築物の総合的な専門家」としての役割を果たすことが求められている。こうした建築士を巡る環境変化を踏まえ、対象実務の考え方に「建築物を調査・評価する」業務を追加して対象範囲を拡大する。

     

     設計・施工関係では、建築物に関する調査や評価、建築工事の指導監督、施工の技術上の管理などを加える。建築、住宅、都市計画に関する行政業務を追加。設計製図などを担当する建築教育の教員業務や、査読付き学術論文に関する研究なども加える。

     

     建築士の受験志望者が対象範囲かどうかを判断できるよう、実務経験の例示リストを建築士免許登録機関のホームページで公表し、順次更新する。今回の見直しで追加された実務を施行日前に行っていても、実務経験年数にはカウントされないので注意が必要だ。

     

     対象実務の拡大とともに実務経験が免許登録要件となることから、実務経験に関する確認・審査が厳格化、厳密化される。実務経験の申請に第三者証明を求める。建築士事務所での実務は原則として管理建築士または所属建築士が証明、建築士事務所以外での実務は原則として法人による証明に限定する。実務経験の内容について、より詳細な申告を求める。

     

     法改正に伴い実務経験を審査する事務が試験機関から登録機関に移管される。1級建築士免許の指定登録機関の日本建築士会連合会(士会連合会、三井所清典会長)は、実務要件を審査する新組織を立ち上げる。学識者を交えた審査会を改正法施行と同時期に設置する予定。建築士の登録を行う上で必要な実務を確認する。

     

     指定試験機関の建築技術教育普及センター(井上勝徳理事長)は審査業務の移管を受け、資格試験の運用や講習会といった業務を担当することになる。

     

     実務経験の審査手続きの厳格化などから、事務に関する人件費の変動を見据えつつ、物価変動や業務合理化などを反映して建築士の登録・受験に関する手数料を改定。手数料は▽1級建築士登録=2万8400円▽1級建築士受験=1万7000円▽2級・木造建築士の免許に関する事務(標準)=2万4400円▽2級・木造建築士の試験実施に関する事務(標準)=1万8500円。

     

     建築士試験は学科と製図の2科目があり、学科試験合格後に製図試験を3回受験できる。製図試験が柔軟に受験できるよう学科試験合格の有効期限(学科試験免除)を3年から5年に延長。5年間で3回の受験を可能にする。新しい建築士試験制度となる20年の学科試験合格者から適用する。

     

     建築士事務所の図書保存の制度を改定する。現在、建築士事務所が保存する図書の対象外となっている4号建築物の構造関係書類も保存対象に加える。これによりすべての建築物で▽配置図▽各階平面図▽2面以上の立面図▽2面以上の断面図▽基礎伏図▽各階床伏図▽小屋伏図▽構造詳細図▽構造計算書等▽工事監理報告書-の各図書を15年間保存することが義務付けられる。

     

     《新たな実務経験の対象範囲(追加する実務)》

     

     ■建築物の設計に関する実務

     

     △基本計画策定業務のうち、建築士事務所で行われる建築物の設計に関する図書の作成業務(図書作成のために必要となる直接的な業務を含む)

     

     △建築士事務所で行われる標準的な設計を行う業務(単なるトレース業務は除く)

     

     ■建築工事の指導監督に関する実務

     

     △法令に基づく法人による建築工事の指導監督実務(単なる記録に関するものは除く)

     

     ■建築物の調査または評価に関する実務

     

     △建築士事務所で行われる建築物の調査または評価に関する業務

     

     ■建築工事の施工の技術上の管理に関する実務

     

     △以下の業種区分に関する施工の技術上の管理

     

     ・専門性が高く独自に施工図の作成が必要となるような工事

     

     ・建築物の部分または機能の一部に関する工事であって、建築物全体または多くの機能(構造、設備、計画など)との関係が密接な工事

     

     ■建築・住宅・都市計画行政に関する実務

     

     △建築行政

     

     △住宅行政(建築物に直接関係する業務に限る)

     

     △都市計画行政(具体的な建築物の整備等に関する業務に限る)

     

     ■建築教育・研究・開発・その他の業務

     

     △建築士試験に関する全科目を担当可能であり、かつ設計製図を担当する建築教育の教員の業務

     

     △建築物に関する研究(ただし査読を経て学会誌に掲載等されるなど、第三者による一定の審査を経て公表等されるものに限る)

     

     △建築士事務所で行われる既存建築物の利活用検討・維持保全計画策定の業務(ただし建築物に直接関係する業務に限る)

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    掲載日: 2019年11月29日 | presented by 日刊建設工業新聞

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