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新時代令和 技術革新が融合生む/回想 2019年/船団方式から個社の判断へ
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>平成の30年が終わり、新元号「令和」スタートの年、2019年が暮れようとしている。安倍政権は、国・地方支出と財政投融資を合わせた13兆2000億円の財政措置、事業規模で26兆円程度の「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を決定。その上で公共事業関係費1兆1865億円の19年度補正予算案、公共事業関係費6兆9000億円の20年度当初予算案を相次ぎ閣議決定した。補正予算案が来年早々の国会で承認が得られれば、切れ目のない15カ月予算の執行が続くことになる。令和元年を振り返れば新たな時代も見えてくる。
地域建設企業の大半を占める中小・零細規模の元請けと下請けの経営安定化と、社員や技能労働者の処遇改善の原資に直結する工事量は堅調に拡大しつつある。
国土交通省の名目建設投資見通しでは、19年度見通しが62兆9400億円(建築41兆2700億円、土木21兆6700億円)と前年度から2兆円増となる。
バブルとバブル崩壊、さらにはリーマン・ショックといった景気の大変動を経験した平成の30年間は、建設市場と建設産業界にとっても大きなうねりに翻弄された時代だった。国交省の名目建設投資によれば、建設投資額のピークは、1996(平成8)年度の約83兆円。これに対し平成時代に最も建設投資額が縮小したのは、民主党政権発足の翌年に当たる10(平成22)年度の41兆9000億円余。18年間で42兆円程度投資額が縮小したことになる。年間にならすと毎年2兆3000億円ずつ減少した計算だ。
一方、10年度を起点にその後の自公政権復活以降、投資額は順調に拡大、19年度までの9年間で21兆円程度増加した。年計算では毎年2兆3000億円ずつの増加で、奇しくもピーク時から坂道を転げるように減少の一途をたどった建設投資額は、減少幅と同額程度の幅で再び増加に転じた形となった。
内訳をみても、土木と建築いずれもがバランス良く復調している。建築の41兆円台は建設投資額がピークだった96年度以来の水準まで戻った。また21兆円台の土木も05年度以来の水準まで回復した。
建設産業界にとって、土木・建築の建設投資額拡大という需要の増加だけが経営や収益などさまざまな環境改善・好転につながったわけではない。
97年度の単価公表以来、最高値となった公共工事設計労務単価、受注可否の目安になっている調査基準価格の上限・下限の設定範囲の10年ぶりの引き上げ改定、工期ダンピングを法律で禁止することなどを柱とした新・担い手3法施行を追い風に、元請けも下請けも平成の30年間で幾度となく個社や業界の疲弊を招いた「収益より受注額重視」という過去の轍(てつ)を踏まずにいることが、収益改善最大の理由だ。
大手・準大手、中堅ゼネコンを中心に建築工事の着工床面積が、国交省統計でリーマン・ショック前までの水準に回復していない段階で、売上額、利益額・率などが過去最高を更新していることが証左だ。生産性向上が進まず収益向上が目に見える形で表れにくかった中小・零細企業も、前払保証会社による財務統計調査で収益改善傾向がようやく出始めていた。
一方、20年夏季東京五輪以降にプロジェクト件数が一段落し市場が急減してしまうという、これまでの不安が完全に払拭(ふっしょく)されたのもことしの特徴といえる。大規模で長期にわたる東京都内の再開発事業は五輪後も継続して進むほか、首都圏以外でもインバウンド(訪日外国人客)、リニア、万博、IR(統合型リゾート)、PFI・PPPなどさまざまなプロジェクトに派生・直結するキーワードも目白押しだ。
目白押しの建設プロジェクトが景気の「気」を高める役割を担った。また地域経済も公共事業が一定程度支える役割が続く。19年度補正予算案では防災・減災、国土強靱化の後押しを柱にしたほか、財政投融資で新名神6車線化や都市再開発促進を進める。閣議決定済みの20年度予算案でも公共事業関係費は前年度並みを確保した。
建設市場の規模が一定程度維持される中、建設市場に次いでことしの建設産業トレンドを表すキーワードは「融合」だ。グローバル社会での進展に追随する政府主導のデジタル化政策と技術革新を背景にした新たな動きは、規制緩和を追い風に既存の産業の枠や業務領域を越え、新たな事業領域を生み出す。
都市開発での不動産と金融の融合による多様化・高度化する資金調達手法や、地域の行政と地元企業が参画し全体の事業枠組みを全国企業がつくるPPP、道路会社などの発注者と民間企業、大学などが一緒になって効率的・合理的な施工工法や構造物の開発を進めるといった例が端的だ。
デジタル化とさまざまな可能性がある技術革新の進展は、個社それぞれの経営判断に基づく重点的取り組みを促し、これまでのような「連携」から「融合」へと関係を強化させる。結果的に個社のこうした判断は、業界や産業で統一的な対応を図る船団方式が平成時代からさらに崩れつつあることを示した1年だった。
残り50%掲載日: 2019年12月27日 | presented by 建設通信新聞