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  • 2019年重大ニュース/堅調な市場 次代に備える

    ◆相次ぐ自然災害/気候変動踏まえ対策の検討急ぐ

     

     猛烈な風で東京電力の鉄塔と電柱が倒壊して千葉県を中心に93万軒が停電した台風15号や、記録的な雨で140カ所の河川堤防が決壊した台風19号など、大規模な自然災害が相次ぎ、降雨強度の増加と降雨パターンの変化が見込まれる気候変動の顕在化を実感せざるを得ない1年だった。

     

     国土交通省は2020年夏の取りまとめに向け、新たな水災害対策の検討に着手した。ハード・ソフトだけでなく、土地利用の規制や居住誘導など土地政策との連携も強化し、流域全体で水害に備える方針。下水道や港湾、砂防、海岸でも気候変動を踏まえた対策の検討を始めている。

     

    ◆五輪施設が続々と完成/見えてきた夢舞台 後利用に課題残る

     

     2020年夏の東京五輪・パラリンピック大会に向けて東京都が整備してきた恒久施設がことし、続々と完成を迎えた。

     

     4月の夢の島公園アーチェリー場を皮切りに、有明アリーナなど5施設が完成。残る東京アクアティクスセンターも20年3月に供用開始する。

     

     11月末には、国立競技場が待望の竣工を迎えた。開会式を行うメイン会場の完成で、4年に一度の夢の大舞台が目に見える形となった。

     

     一方、国立の利用計画は策定を大会後に見送った。都の施設も民間が運営する有明アリーナを除き、いずれも赤字の見通し。大会後の施設利用には課題が残る。

     

    ◆19年3月期決算/売上2兆円時代、総じて好調示す

     

     大手・準大手ゼネコン26社の2019年3月期連結決算は、順調な手持ち工事の消化によって26社中7社の売上高が過去最高となるなど総じて好調だった。大林組が初めて売上高2兆円を超えたほか、準大手4社も5000億円を超えた。利益面も、資材・労務費の上昇が想定の範囲内で収まり、6割が過去最高益を記録。20年3月期も売り上げ、利益とも総じて好調で、鹿島も通期で売上高2兆円を超える見通し。“踊り場”に入っている受注が不安要素だが、この好況の間に働き方改革を始めとする諸問題への対応をどこまで進められるかが、今後の各社の行方を握る。

     

    ◆ひろがるM&A/グローバル事業拡大、現地企業と提携も

     

     建設産業界でもほかの産業と同様に、M&A(企業の合併・買収)を積極的に推進する動きが広がっている。建設コンサルタント企業は、新規事業や新分野、次世代事業の創出に向けた異業種のM&Aだけでなく、同業の建設コンサルタントとのM&Aや提携にも動いている。M&Aを通じて企業グループの成長を推進する建設企業も増えつつある。また、グローバル事業拡大戦略の1つとして、現地企業をM&Aする動きも加速している。建設コンサルタント企業や設備工事企業などだ。国内市場がシュリンクすることに備えた動きといえる。

     

    ◆改正労基法スタート/受発注者が連携、就労環境を改善

     

     4月から改正労働基準法が施行され、一定規模以上の建設コンサルタントなどで時間外労働の罰則付き上限規制の段階的適用が始まった。

     

     建設業は5年の猶予があるものの、喫緊の課題である担い手対策を推進するため、長時間労働の是正、休日の取得促進を柱とする働き方改革に既に取り組んでいる。残業時間の削減や休日取得は着実に成果を上げつつあるが、業務が集中する年度末などは依然として休みづらい状況となっている。働き方改革の実現には受注者の自助努力だけでは限界があることから、引き続き発注者と連携して就労環境を改善していく必要がある。

     

    ◆CCUS本格始動/登録加速に向け取り組み活発化

     

     ことし4月から本格始動した建設キャリアアップシステム(CCUS)は、11月末までに約15万人の技能者が登録を完了したものの、運用から5年を目標とする「300万人を超える全技能者の登録完了」までの道のりは半ばと言える。

     

     国土交通省と日本建設業連合会は現状を踏まえ、同システムのモデル工事・現場を試行しているほか、山梨県など一部の自治体では入札契約制度の中でインセンティブ(優遇措置)を付与し、登録拡大を図っている。

     

     目標達成には中小建設企業などの積極的な姿勢が不可欠で、技能者の待遇改善につながるという実効性が感じられれば、システム登録は加速していく。

     

    ◆新・担い手3法制定/民間発注者も対象の抜本的な制度改革

     

     建設業界にとって2019年通常国会の最重要法案となった公共工事品質確保促進法と、建設業法・入札契約適正化法の改正法が成立し、「新・担い手3法」の制定に至った。働き方改革や生産性向上、相次ぐ自然災害など建設業を取り巻く諸課題に対応するため、建設企業と公共発注者だけでなく、民間発注者や建設資材の製造業者も対象とする抜本的な制度改革となった。

     

     改正品確法では災害時の緊急性に応じた適切な入札・契約方法の選択を発注者に課す。これまで明文化されていなかった測量、地質調査、設計など公共工事に関する業務も同法の対象となることも定義付けた。

     

    ◆改正建設業法成立/工期の新規定設け働き方改革を推進

     

     建設業法の改正で、新たに強く打ち出したのは工期についての規定だ。時間外労働の上限規制の適用が迫り、工期の適正化が急務となる中で、建設業法で著しく短い工期による請負契約の締結を禁止する規定を新設。中央建設業審議会が作成する工期に関する基準を前提に直接的な規制に乗り出す。

     

     禁止規定に違反した発注者に対しては、国土交通相などが勧告できる仕組みを創設し、勧告にも従わない場合には、公表するなど実効性をもった対策を設けた。禁止規定は建設企業にも適用され、違反した場合は監督処分の対象となる。

     

    ◆新在留資格「特定技能」/JACを設置し外国人受入拡大

     

     

     

     改正出入国管理法に基づく新たな在留資格「特定技能」による外国人の受け入れが2019年度からスタートした。人手不足が深刻な業種を対象に、一定の語学力や能力を持つ即戦力となる外国人材を受け入れる。

     

     建設分野では生産性向上と国内人材の確保に取り組んでもなお、不足する4万人を今後5年間の受け入れの上限に設定した。建設業界の協働によって立ち上げた新組織「建設技能人材機構」(JAC)が技能評価試験の実施などを担う。現在、ベトナムやフィリピン、インドネシアでの試験実施に向け調整を進めている。

     

    ◆調査基準価格改定/10年ぶり見直し、範囲を引き上げ

     

     国土交通省は、直轄工事における低入札価格調査基準(調査基準価格)を10年ぶりに見直した。予定価格の70-90%となっていた従来の設定範囲を75-92%に引き上げた。

     

     工事の低入札価格調査基準の改定に合わせて、測量業務と地質調査業務の低入札価格調査基準も見直した。測量業務は、予定価格の60-80%となっている従来の設定範囲を60-82%に引き上げた。業務における設定範囲の見直しは初めてとなる。

     

     地質調査業務は、設定範囲に変更はないが、諸経費の算入率を変更。諸経費に対する算入率を測量業務や土木コンサルタント業務と同様の0.48に引き上げた。

     

    ◆PFI法公布20年/事業手法が多様化、官民の連携広がる

     

     PFI法が公布となった1999年7月から20年が経過した。公共事業プロセスの大改革であり、大型事業の多くがPFIに姿を変えた。この20年間でより広義の「官民連携」を指すPPPの概念が普及し、事業手法の多様化も進んだ。11年の法改正では、施設運営権を民間に付与する「コンセッション(公共施設等運営権)」が誕生し、地方拠点空港などへの導入が進んでいる。

     

     一方、地方自治体の間では、PFI法に基づかない定期借地権方式など、さまざまな官民連携手法が広がっている。法定の事業実施手続きが不要で、スピーディーに事業化できるメリットがある。

     

    ◆新技術開発加速/山岳トンネル工事 各社効率求め導入

     

     将来的な熟練技能労働者の大量離職と、新規入職者の減少が見込まれることを背景として、生産性の向上が喫緊の課題となっている。このため、ICT、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)を駆使した省人化、省力化の取り組みが加速した。特に目立ったのが山岳トンネル工事の一連の作業の効率化で、各社が次々と新技術を導入した年でもあった。これまで熟練技能労働者の経験と勘に依存していた部分をICT、IoT、AIを活用することで、誰でも定量的かつ容易に作業を行うことができることを目的とした技術開発を各社が積極的に進めた1年だった。

     

    ◆堅調な建設投資/新たな経済対策で15ヵ月予算を編成

     

     政府の2020年度予算案は、公共事業関係費が6兆0669億円に上り、8年連続で増額を確保した。「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」の7902億円もある。新たな経済対策に基づき、19年度補正予算案と合わせた“15カ月予算”で編成されており、20年度は効率的な予算執行が求められる。

     

     民間投資も堅調だ。建設経済研究所は、20年度の民間投資を前年度比0.9%増の41兆2400億円と試算した。建築は事務所や倉庫の建設が続き、リニア中央新幹線など大型プロジェクトへの投資によって土木も伸びるとの見方を示している。

     

    ◆多様な働き方改革が本格始動

     

    ◇設計/官民一体のBIM普及加速に期待

     

     改正労働基準法の施行により、4月から「時間外労働の罰則付き上限規制」の対象となった大手建築設計事務所では、施行を見据えて前倒し実施していたテレワーク、残業抑制などの多様な取り組みが本格始動した。2020年4月からは圧倒的多数を占める中小事務所への適用が始まる。大手と異なり、マンパワーが限られている中で、多様な働き方をどう実現できるかが課題になりそうだ。

     

     生産性向上では6月に国土交通省の建築BIM推進会議が初会合を開き、官民一体の取り組みが動き出した。建築設計界からは「動きが遅すぎる」といった意見もある一方、BIM普及の加速に対する期待の声も多い。会議が20年3月にまとめる一定の検討成果に注目が集まる。

     

    ◇建設コンサルタント/大規模災害に対応、年度末が正念場

     

     4月の改正労働基準法施行をにらみ、長時間労働の是正とともに担い手確保へ多様な働き方を実現する制度を整え、ICTツールの積極活用による業務効率化に取り組んできた建設コンサルタント各社にとって、さらなるハードルとなるのが相次ぐ大規模で広域的な自然災害だ。迅速な復旧支援へ各社とも最優先で対応に当たる一方、防災・減災、国土強靱化予算の積み増しにより事業量が増大する中でマンパワーの確保と働き方改革の両立は大きな課題となっている。もとより納期集中の弊害が問題視されている年度末の繁忙期をどう乗り越えるか、これからが真の正念場となる。

     

    ◇ゼネコン/業務見直し、ICTの現場実装がカギ

     

     多くのゼネコンは、4週6休・閉所を目標に掲げ取り組んだ。祝日や夏季・冬季・ゴールデンウィークの長期休暇に合わせた休暇・閉所によって「どうしても休めない現場以外は、おおむね達成できた」という声は多い。ただ、「次の4週7休・閉所以降が難しい」と言われており、本格的な休暇取得対策が求められる。義務化が始まった有給休暇取得5日にも各社が苦慮した1年だった。ただ、休暇取得に対する意識は広がっている。こうした時流に乗り、一人ひとりの業務内容の見直しやICT技術の現場実装など生産性向上と合わせた取り組みが成功のかぎを握る。

     

    ◇設備工事/バックオフィスで現場書類作成支援

     

     設備工事各企業では、働きやすい職場環境の整備に向け、働き方改革と生産性向上に取り組んでいるといえる。管理部門では残業時間の削減が進んでいる。

     

     ただ、繁忙期でもあり、現場の技術者の残業時間削減はあまり進んでいないのが実態だ。4週8休の実現までには、まだまだ時間がかかる状況にある。

     

     各社共通の取り組みといえるのは、現場での書類作成業務などをバックオフィスで実施することだ。現場支援組織を設け対応している。また、ICTを積極的に取り入れ、現場と事業所などをつなぎ、書類作成の効率化に加え、現場に対する技術支援も進んでいる。

     

    ◇専門工事業/休日取得と給与の維持両立が課題

     

     専門工事業の働き方改革は、休日の取得促進にとどまらず、給与水準の維持という課題も抱えている。技能者の給与体系は日給月給制が大半を占めるため、現場閉所に伴って休日は増える半面、収入は減少する。月給制への移行は解決策となりえるが、専門工事業者の企業負担を考慮すると、現状から契約単価の2-3割増加が不可欠とみられ、現実的には難しくなっている。

     

     ただ、特定技能外国人労働者の活用を見据え、月給制の必要性は高まっている。国土交通省は賃金支払い状況などに関するアンケートを実施し、技能者の待遇改善に向けた検討を進めている。

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    掲載日: 2019年12月27日 | presented by 建設通信新聞

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