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  • 好業績の裏に不安要素も/マンション受注は悪化の一途/水位低下で顔のぞかせる取組成果

     2020年3月期の大手・準大手ゼネコンの通期業績は、前期に引き続き、好調のまま駆け抜けそうだ。ただ、その影で中小規模の建築物件で受注競争が徐々に激しさを増してきており、特に新設住宅着工戸数の減少を背景としてマンションの受注環境は悪化の一途をたどっている。売上面でも、夏季東京五輪の開催期間中の出来高が上がらない可能性があり、都内工事の比率が高いゼネコンには影響が出てきそうだ。

     

     大手・準大手ゼネコン各社のトップは、「首都圏の再開発需要が数年後まで見渡せており、土木でも国土強靱化や防災対策関連の発注が見込まれる」と口をそろえ、ある準大手ゼネコン社長は「21年3月期は手持ち工事が過去最高を上回る。確度の高い案件や取り組んでいるプロジェクトも合わせると1兆円の受注案件がある」と自信をみせる。受注面も「19年12月末をピークとしていったん、下降線をたどるが、23年ごろには再びピークになる」(準大手ゼネコン社長)という声が多い。

     

     ただ、準大手・中堅のゼネコンの中には「民間建築で競争相手が増え、陰りが見える」「建築市場の環境が若干、厳しくなり、潮目が変わってきた」と口にする経営陣が増える。特に「首都圏の住宅市場が冷え込んでおり、建築費にしわ寄せがきている」と住宅以外の分野の拡大を急ぐ準大手ゼネコンも多い。この影響は、新設住宅を主戦場とする住宅建材メーカーに顕著に表れており、大手サッシ系メーカーのトップは「20年は消費増税の駆け込みの反動で、氷河期がくる。春は来ない」と断言する。建築用ガラスの市場は特に厳しく、既存メーカーのさらなる寡占化を予想する声もあるほどだ。

     

     21年3月期の売上面は、夏季東京五輪が1つのキータームになる。開催期間中の交通規制によって都心部への生コンクリートの搬送ができなくなる可能性があるため、各社はゴールデンウィークへの打設期間の前倒しや、夏季休暇期間への後ろ倒しを検討している。生コン打設だけでなく、「五輪の運営側が、資格を持つ警備員を高値で大量に確保しており、交通誘導員を確保できず現場を開けられない」という声も上がる。全国的に工事を抱えるゼネコンに大きな影響はないものの、ある中堅ゼネコン社長は「五輪開催中の2カ月間、出来高が上がらない」と懸念を示し、特殊土木系の会社も「首都圏の割合が高く、五輪開催時の影響がある。東京支店で2カ月間も出来高が上がらないと深刻だ」と懸念を示す。

     

     また、大手ゼネコンが手掛けるオフィスなどでも、シンボリックな大型案件は五輪開催前を目指して施工してきたプロジェクトが多い。21年3月期は「都内の再開発が緒に就いたばかり。これから各社がそれに注力するステージに入る」(大手ゼネコン)と、工事着手段階のため出来高が上がりにくい環境で、売上面でここ数年続いた過去最高の更新が止まる可能性も否定できない。

     

     好環境でありながら不安要素を抱える1年では、東日本大震災以降に各社が取り組んできた新事業創出や生産性向上による利益改善の成果が業績に直結してくる可能性がある。高い水位の水面下で構築してきた土台が、わずかな水位の低下で顔をのぞかせる格好で、どういう土台を築いてきたかが明らかになる年とも言えるかもしれない。

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    掲載日: 2020年1月6日 | presented by 建設通信新聞

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