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連載・2020年業界を読む・下/元下関係は囲い込みの先へ/直用化と優秀な協力会社の育成
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>ゼネコン各社がそれぞれの歩むべき道を定めようとしている中で、協力会社にも変革の波が押し寄せている。東日本大震災以降の事業量の増加で担い手確保の困難さが顕在化したゼネコン各社は、マイスター制度や協力会社の採用活動支援など、いわゆる“囲い込み”策を競って展開してきたが、取り組みはもはや横並び状態となり、ゼネコンと協力会社の関係は新たなステップに移ろうとしている。
働き方改革と担い手確保に向けた取り組みは、2020年にも具体的に動き始める。鹿島は、下請次数の2次までの限定化や、平時稼働時間の延長と報奨金の支払いなど担い手確保の具体策について21年3月期の1年をかけて協力会と協議する。フジタの奥村洋治社長も「1日の労働時間を長くして4週8休を守る技能者に奨励金を出すことを検討している」とするほか、「日給月給がさまざまな面の課題となっているため、最低補償プラス歩合の採用など、業界全体の問題として解決すべきだ」(小西武みらい建設工業社長)という声もある。
ただ、こうした制度変更だけでなく、地殻変動とも言える動きも出始めている。大成建設の村田誉之社長は「建設キャリアアップシステムの導入は、それぞれの技能者の職人としての技能を守りながら、強い専門工事会社を築くことにつながる。その結果として、重層化が解消される可能性もある。協力会社と元請けの役割分担の中でいかに最適な生産体制を構築するか。その新しい生産体制に手が届いた企業が勝つことになる」と元下関係が変わり始めた機運を表現する。前田建設の前田操治社長も「受発注者という上下関係ではなく、人的・技術的・資本的な関係が今後、さらに求められる」と率直に語る。
その具体的な方法が、優秀な協力会社の育成と優遇だ。大林組の蓮輪賢治社長は「教育訓練校などを設置し、優れた協力会社には支援することで若手も含めた技能者を確保する。それがマーケットでの強みになる」とするほか、鹿島の押味至一社長も「(多能工化やロボット化など)成長を目指して挑戦する協力会社には助成金を出す仕組みを考える」と明かす。この流れをストレートに表現すれば、「キャリアアップシステムや働き方改革などの取り組みに積極的な協力会社に優先発注するというルールづくりも考えられる」(準大手ゼネコン幹部)という協力会社の優先順位付けだ。ある大手ゼネコン幹部は「優秀な職長には、元請けの若手技術者が担ってきた監督の仕事を任せたい」とまで語る。元請けがプロジェクトの川上段階に関与する志向を強めることで、協力会社が従来の元請けの仕事を担う流れが加速する。
もう1つの流れは直用化だ。ある大手ゼネコンの幹部は「建設業界に突出した存在の会社がなかったのは、技能者や専門工事会社といった生産能力を自社で持っていないから。これを自社グループ内に取り込めば、突出した存在になれる」と直用化の進展が業界構造に与える影響の大きさを解説する。既に鹿島が耐火被覆などの専門工事会社をグループ内に抱えたように、技能者が急激に減少する職種では直用化の動きが始まっている。ライト工業では、担い手確保が難しいのり面の専門工事子会社を立ち上げ、「後継者がいなくて廃業する会社の技能者を30-40人ほど雇い入れた」(鈴木和夫社長)と明かす。担い手不足を解消するほどの規模ではないが、人手が不足する全国の現場を補完する役割を担える。鹿島では「グループ内の会社が(多能工化やロボット化など)さまざまなことに取り組み、ほかの協力会社の見本になってくれれば」(押味社長)というトップランナーとしての役割も担う。
将来、協力会社を含む建設業はどういう姿になっているのか。その片りんが20年には見えてくる。(竹本啓吾)
残り50%掲載日: 2020年1月9日 | presented by 建設通信新聞