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  • 建設業はいまNo.5・第1部衝撃⑤

    【鹿島の覚悟 職人育成は元請責任/顔認証で管理、割増も直払い】

     

     週6日労働から週5日労働へ--。いわゆる“週休2日”の徹底によって生じる1日分の労働時間を週5日に振り分けると、1日当たりの残業時間は1.5時間。これをこれまでの1日の就業時間に加算し当てはめると、朝7時30分から夕方6時までの労働時間となるが、「こうするしかない」ことを協力会に提示したと話すのは、鹿島の押味至一社長。押味プランとも言うべきアイデア最大の特徴はこの続きにある。「仮に土日に現場作業があったら、作業を行った職人に対し増加した労働時間分に加え、新たな割増分と(職人への)当社独自評価分を合わせた額を、報奨金形式で職人に直接支払うことを原則にする。職人の確認は建設キャリアアップシステムの管理に加え顔認証システム導入で入退場管理する」

     

     元請けから請け負いで受注する専門工事業と、1日当たり・1㎡当たり単価で請け負う形が多かった職人のいずれにしても、労働時間に応じた賃金や土日などの割増賃金という発想はこれまでまったくなかった。工事の場合、発注者・元請けを始め、元・下や下・下といった重層構造の中で、すべての契約の原則が請け負いで、雇用関係がこれまで曖昧(あいまい)だった専門工事業と職人との関係も日給月給で請負的側面が強い商慣習だったからだ。

     

     だからこそ、週休2日拡大や現場の4週8閉所など建設産業界挙げての働き方改革に対し、「休みが増えれば収入が目減りするだけ」「目減り分を発注者は上乗せしてくれるのか」といった、取り組みの入口段階で議論するため思考回路がストップする例も多かった。

     

     しかし、専門工事業の社会保険加入が進んだことと、現場の入退場管理としても機能する建設キャリアアップシステム導入に合わせ、専門工事業と職人それぞれで評価する評価システム導入議論が始まったことで、新たな展開の可能性がふくらむことになる。社保加入と裏腹の関係である社員化によって、専門工事業と社員である職人は否が応でも、長時間労働是正や時間外労働上限規制の対象として対応せざるを得なくなる。その結果、専門工事業は元請けと共同歩調で対応する環境が整うことになる。

     

     ただ押味プランの底流には、これまでの大手元請企業の経営者にはない発想と覚悟がある。押味社長は、自社の生産性向上と労働力減少に対応する形で進めている、生産の自動化を肯定する一方で、「自動化と同時に職人を育てなければならない。そもそも鍛冶屋(高度な鉄骨溶接技能者)すべてがロボットに代われるのか。洗練された職人を育てるのは、ゼネコンとしての責任でもある」と断言する。

     

     これまで建設産業は、元請けが施工管理と全体事業の総合的マネジメントを担い、個別工事・工種ごとの作業をそれぞれの専門工事業と職人が担う生産システムを構築。その過程で経営の効率化と合理化の結果、元請けは地方ゼネコンでさえ作業部隊をまったく持たない企業が増加、専門工事業も職人を直接雇用しないことで重層化に拍車をかけた。

     

     しかし働き方改革という衝撃は、この重層化を突き崩そうとしているのである。民間工事では工期延長とコストアップ容認が難しいとみる押味社長は、今後の労務コストがある程度上昇することに「覚悟を決めて取り組むしかない」とした上で、「だから生産量を上げる努力をしなければならない」と厳しさも強調する。

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    掲載日: 2018年1月12日 | presented by 建設通信新聞

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