当サイトについて 採用ご担当者様
会員登録はこちら 求人検索

建設技術者向けNEWS

建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!

  • 連載・2020年業界を読む/セメント/実需-出荷に伸び悩みも/相応の「潜在需要」存在

     国内におけるセメント需要が伸びていない。『防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策』の対応経費など、近年の公共投資の増大や堅調に推移する民間投資の動きがメーカー各社にとっての「実需=出荷」として思うように積み上がっていないからだ。それは働き方改革への要請など建設産業あるいは建設現場が向き合う課題と決して無関係ではない。

     

    2676直近20年の国内のセメント需要(官需+民需)

     

     セメント協会が公表している、2018年度における国内の販売数量は前年度比1.9%増の4249万9000t。今期(20年3月期)も当初に設定した4300万tという予測値こそ変えていないが、上期の出荷ペースから「(予測値の達成は)厳しいだろう」「4250万tを割り込むのではないか」という見方が大勢を占める。

     

     首都圏を中心とする再開発プロジェクトなど民間投資が堅調に推移。一方の公共投資も緩やかではあるが、着実に増加を続けているにもかかわらず、国内のセメント需要が伸び悩んでいるのはなぜか。

     

     実際にゼネコンの受注残高が右肩上がりで積み上がっている一方で、メーカー各社の実需に跳ね返ってこないという事実は、働き方改革への要請など建設現場における制約条件の存在を端的に示す。

     

     「足元の需要は伸び悩んでいるが、先行きを過度に悲観する必要はない」という声があるように、東京五輪の関連工事を優先して計画的に手控えていたプロジェクトの数々が今後、本格化していくことからすれば、メーカー各社にとって相応の「潜在需要」があることは間違いない。

     

     全国的に頻発している自然災害への対応など、焦点となっている防災・減災、国土強靱化の推進もセメント需要にとっては追い風の1つ。また25年に開催される大阪万博の関連需要もある。

     

     しかし、いくら需要の裏付けがあったとしても「急激に需要が増加することもないだろうが、急激に減少することもないだろう」とする、ある経営トップの“見立て”は、人手不足にあえぐ、わが国の建設産業の施工力と無関係とは言えない。

     

     近年、横ばいで推移している国内のセメント需要を総合化すれば、余裕を持った工期の設定などいわば働き方改革への“対応マージン”を織り込んだ、現状の日本の施工能力がセメント換算で「年間4200万-4300万t規模」という仮説が成り立つ。

     

     バブル期からみて大きく減少してきた公共投資は、厳しい価格競争の中で国内の建設企業から経営余力を奪い、就業人口の高齢化や中長期的な若手技術者の育成サイクルを削ぐという負の副産物をもたらしてきた。そのツケが建設産業の技術者あるいは技能労働者の不足という形でいま現実のものになっている。

     

     伸び悩んでいる国内のセメント需要は生産性の向上や働き方改革の推進と相まって、これからのインフラ整備に必要な施工力とは何か、産業全体に課題を突きつけている。 (赤間政彦)

    残り50%
    ログインして続きを読む 会員でない方はこちらよりご登録ください

    掲載日: 2020年1月23日 | presented by 建設通信新聞

前の記事記事一覧次の記事