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  • 土木学会、台風19号踏まえ提言/リスクに応じ国土形成/多段階防御設計を基本

     土木学会(林康雄会長)の台風第19号災害総合調査団は23日、東京都内で会見し、「台風第19号災害を踏まえた今後の防災・減災に関する提言」を公表、説明した。河川流域全体の治水安全度の向上に向け、洪水ハザードマップの実効性を高めた「多段階リスク明示型浸水想定図(仮称)」を提案。国土を均一に安全にするという従来の考え方から脱却し、地域ごとのリスクに応じた国土づくり、インフラ整備へと転換することで、戦略的な防災・減災対策をより一層推進する。 洪水ハザードマップの多くが100年に1度など発生確率の低い大水害を想定し、浸水想定区域などを地図上に示している。

     

     これに対し、多段階リスク明示型浸水想定図は、河川堤防の整備状況や既存堤防の強度など、解析・観測技術、データから、どの程度の降雨量でどの領域が氾濫するかを高い水準で判断できる「氾濫リスク」に基づき、20年、30年に1度の降雨であってもある地域では堤防の破堤や越水が生じ、浸水する可能性があることを明確化する。同調査団の副団長を務めた家田仁氏(政策研究大学院大)は現行のハザードマップのように「ゼロか1のような表現ではなく、氾濫リスクに応じたグラディエーションが出るイメージ」と例示した。

     

     堤防を始めとする河川施設の現状、地域特性(河川沿いの低地など)に応じた治水安全度が地域別に細かく明示されれば、施設整備の優先度の検討に生かせるほか、短期・中長期的な視点の対策にもつながる。具体化については「流域全体を見据えた多段階防御設計を基本とすべきだ」としている。

     

     また、河川氾濫を減少させる「最も重要で確実な水害対策は河川整備」としつつも、ハード対策だけでは自然災害への対応として限界があるため、治水安全度の明確化は発災時の水防、避難活動、安全な地域への移住などソフト面の促進にも寄与するとみている。

     

     提言の中では、地域・都市政策と治水政策が一体となった「流域治水」を実現する上で、洪水負担のかかりやすい下流域(都市部など)だけでなく、中・上流域を含む「流域全体を俯瞰(ふかん)した強靱性の高い国土づくりと、地域のリスクに応じた効率的な国土利用への転換」を求めている。

     

     さらに流域ごとにその将来像や関連する取り組みを協議する組織の設立の重要性、自然災害に対する保険システムが不十分なことから「氾濫リスクの高低を特定・公表した上で、水災保険制度を強化すべきだ」などと提起している。

     

     林会長は調査団長として、3回にわたる調査活動を振り返りながら、今回の提言を契機に「流域治水の考え方を国全体で共有し、(河川管理者、自治体などと)住民、水防団などが一体となった取り組みが進んでいけば」と、今後の洪水被害の軽減に期待を寄せた。会見には廣瀬隆正(三菱地所)、福岡捷二(中央大学)、山田正(同)、知花武佳(東大)の各氏も出席した。

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    掲載日: 2020年1月24日 | presented by 建設通信新聞

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