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  • 連載・未来を紡ぐ-これからの地域建設業/長崎県建設業協会会長 谷村隆三氏

    【大企業と零細との格差懸念/適正利潤は入札制度の影響大きい】

     

     長崎県建設業協会の谷村隆三会長は、「事業縮小が進んだ15年前はいまとまったく逆で、人を減らし、給与を下げていた」と振り返り、傷つき弱体化した企業経営は「いまだ回復していない状況」とみる。この間、多くの企業が廃業しており、「儲からない。苦労に見合う報酬が見込めず、将来への不安が大きかった。事業承継が問題になるのは当たり前」と重く受け止める。

     

     ここ数年、景気回復による民間投資の拡大や公共工事の減額に歯止めがかかり、「良い方向に向かっている」との認識だが、恩恵は大企業に偏り、「大企業と零細企業の格差が拡大している」と指摘。中間層の不在による災害対応への影響を懸念する。

     

     建設業の喫緊の課題である働き方改革は「時代の流れ。環境をつくらなければ若者は入職しない」と厳しい目を向ける。ただ週休2日制には、日給労働者の収入の確保、適正な補正率、工期延長の費用の捻出などの課題も多い。補正率については「国は対応しているというが、実際に積算すると大きな開きがある」とし、提案される交代制も「その人たちをどこから調達するのか」と、現実とのギャップに頭を抱える。

     

     建設キャリアアップシステム(CCUS)は、「各企業のものさしを一般化しようという話。経験時間や経歴だけで図っていいものか」と制度に対する疑問を呈し、「各企業とも腰が引けている」状態だという。

     

     新・担い手3法でうたわれている「適正な利潤」は、「入札契約制度の影響が大きい」と分析する。長崎県は10年前、全国に先駆けて最低制限価格を予定価格の85%から90%に引き上げた。この結果、その年の県内建設業の決算は営業利益率が軒並み上がった。今後も経営に直結する制度設計に引き続き注視するとともに「実際の施工に合った積算に変わる」ことを求めていく。

     

     若者のリクルートでいつもキーワードとなるのが「やりがい」だ。抽象的で、個人の価値観によるところも大きいが、「(建設業に勤める)自分たちがまずは楽しみ、面白がること」と概念整理する。また、「面白いことしかいまの若者は求めない」ため、建設業がそれを提供できるかどうかもポイントの1つとなる。

     

     ICTやAI(人工知能)、ロボットは確かに若者の気を引くが、これらが連想させる知的業務に対し、「体で考え覚え、働こうとする人たちもいる」とした上で、建設業が彼らの雇用の受け皿を担ってきた歴史に思いを馳せ、「広い視点、多様な発想に立った施策ができないかを考えている」

     

     長崎では、2019年に五島列島などが豪雨災害に見舞われた。約30年前、同じ場所で同規模の豪雨災害があったが、死者4人、家屋被害1800戸が発生した当時と比べ、19年の被害は死者ゼロ、家屋被害は5戸にとどまった。「計画的に社会資本整備を進めた結果だ」と、建設業の仕事に自信と誇りを持って社会にも訴えかけていく方針だ。

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    掲載日: 2020年1月28日 | presented by 建設通信新聞

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