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  • スコープ/台風15号被害、政府検証チームが中間まとめ/長期停電などで対応策整理

     2019年9月に首都圏へ上陸し、千葉県の広い範囲で停電や断水、建物被害をもたらした台風15号。大規模な停電が長時間続いた原因や復旧プロセスなどを話し合う政府の検証チームが中間取りまとめを行った。15号の被害で明らかになった課題に対し、対応策を整理。電気事業法の改正や技術基準の見直しといった具体策を盛り込んだ。中間取りまとめのポイントを紹介する。

     

     台風15号では千葉県を中心に停電や通信障害が長期化。検証チームは、関係省庁や千葉県での検証結果を踏まえ、行政の初動対応や関係機関との連携に課題があったと指摘した。中間取りまとめでは▽長期停電▽通信障害▽初動対応▽その他-の四つの論点ごとに対応策を示した。

     

     長期間にわたる停電については、復旧作業に時間がかかり通電が遅れたことを踏まえ、大規模災害時には完全復旧よりも早期の停電解消を最優先する「仮復旧」を早期実施する。電力会社や地方自治体、建設業など関係機関での災害時連携計画の制度化や、地域のレジリエンス(弾性、復元力)向上のための分散型電源設置を促進する制度整備などの実現に向け、電気事業法などを改正。開会中の通常国会に改正案を提出するとしている。

     

     鉄塔や電柱の損壊被害が多発したことを受け、技術基準を見直す。電気設備(鉄塔や電柱など)に関する現行基準の「(1秒当たりの)風速40メートルの風圧荷重」との規定を維持しつつ、地域の実情に応じた基準風速を適用する考え。併せて電気事業法を改正し、鉄塔設備の計画的な更新や無電柱化を含めた送配電設備への必要な投資を適切に行うための託送料金(小売り事業者が配送電事業者に支払う送電料金)制度を見直す。

     

     電力会社は、自治体や自衛隊など関係機関との連携を通じた倒木処理や伐採の迅速化とともに、自治体と連携した事前伐採を推進。自治体主体で倒木を未然に防ぐための計画伐採の取り組みについて協議した上で、協定などを結ぶ。送配電線や道路など重要なインフラ施設に近接する森林については、市町村など公的主体や森林所有者、インフラ施設管理者がそれぞれの役割分担を明確にした協定を締結。公的主体が森林整備を行い、災害の未然防止につなげる取り組みを支援する「重要インフラ施設周辺森林整備」を創設するとしている。

     

     医療・福祉施設や上下水道施設、官公庁舎、避難所といった社会的に重要な施設への非常用電源の整備を促進する。電気事業法を改正し、災害時・緊急時のレジリエンス向上のため、分散型電源設置を促進する民間事業者への支援措置や、分散型電源だけで電源供給を可能とする一般送配電事業者向けの制度整備を行う。

     

     長時間の停電により重要な通信施設の非常用電源が持続せずに通信障害が生じた。自治体庁舎など災害対応の重要拠点をカバーする携帯基地局や通信局舎の非常用電源を長期化するため、具体的なコストや設置場所の物理的制約も加味して検討。その上で、総務省が定める技術基準を見直す。災害時に使用する基地局を搭載した係留ドローン(小型無人機)の活用を技術基準に位置付ける。

     

     初動対応に関しては、災害に不慣れな自治体への支援充実がポイント。自治体の危機管理や防災の責任者を対象に、初動対応や災害対応の各段階で必要な知識や技術を身に付けてもらう研修を充実させる。都道府県の各種支援を迅速・的確に受け入れる受援体制と、市町村への応援体制の構築を促す。

     

     災害対応に当たる自治体の技術職員不足に対応するため、国土交通省の緊急災害対策支援隊(テックフォース)の人員を増強し国の応急体制を強化。自治体が実施する家屋被害調査の人員確保に向け、都市再生機構の人員や応急体制の充実も早急に図るとしている。

     

     平時からの備えとして、関係機関との事前の協力体制を確立し充実させる。都道府県は、できるだけ多様なライフライン関係機関が一堂に関する「防災連絡会」のような相互協力体制を平時から構築。国は必要な措置を講じるとした。

     

     都道府県や市町村は、随意契約の活用による速やかな災害応急対策ができるよう、新・担い手3法の趣旨も踏まえ建設業団体などとの災害協定の締結を推進。国、都道府県、市町村では事前の備えとして、円滑な施工確保に向けた対応や建設業などの担い手確保・育成に取り組むことも盛り込まれた。

     

     ブルーシートを設置できる地域業者の不足を受け千葉県は、被災者と設置業者のマッチング支援を実施。内閣府と国交省は年度内に、こうした取り組みを都道府県に横展開させるとした。

     

     □台風19号検証結果加え最終まとめ□

     

     昨年は9月の台風15号や10月の台風19号、その後の低気圧による記録的な大雨や暴風などが各地を襲い大きな被害が発生した。課題を整理し対応策を打ち出すため政府は検証チームを立ち上げたが、その後も相次いだ自然災害を踏まえ検証体制を「令和元年台風第15号・第19号をはじめとした一連の災害にかかる検証チーム」に改組した。

     

     中間取りまとめは15号の襲来を踏まえた対応がメイン。検証チームは19号で課題となった避難対策や防災気象情報などの検証結果を加え、最終取りまとめを3月末に示す。

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    掲載日: 2020年1月30日 | presented by 日刊建設工業新聞

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