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スコープ/成田空港機能強化プロジェクト始動/世界最高水準の空港へ
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>成田空港(千葉県成田市)の機能強化プロジェクトがいよいよ始動する。事業者の成田国際空港会社が申請していた航空法に基づく施設の変更を国土交通省が1月31日に許可。成田空港会社は騒音対策区域の告示などを待って用地買収に着手する。3本目のC滑走路の新設やB滑走路の延伸、誘導路の整備などを実施し、事業費は5125億円を見込む。発着回数の増加に伴う旅客ターミナルの整備などを含めた総事業費は約1兆3000億円に達する見通しで、「国内最後と言っていい大型の空港建設工事」(同社首脳)が数年後に本格化する。
機能強化は拡大が続く首都圏の航空需要を踏まえ、現在30万回となっている年間発着容量を50万回に増やすのが狙い。国と千葉県、空港周辺9市町、成田空港会社で構成する「成田空港に関する四者協議会」(四者協議会)が2018年3月に「成田空港に関するさらなる機能強化」について合意。羽田、成田の両空港で目指す発着容量100万回のうち成田が50万回を担うと確認した。
四者協議会は15年9月にスタート。具体的な方策を提案した16年9月以降に200回以上の住民説明会が開かれ、成田空港会社らは理解と協力が得られるよう、延べ1万人近い地域住民に機能強化の必要性や環境対策を丁寧に伝えた。
機能強化は▽B滑走路延伸▽C滑走路新設▽夜間飛行制限の緩和-が柱。夜間飛行制限は、19年冬期スケジュールからA滑走路の発着時間を1時間延長し、午前0時までとすることを四者協議会で確認済み。発着時間は1978年の開港以来、初めて延長されることになった。
機能強化に向け成田空港会社は19年11月7日、航空法に基づく空港などの変更許可申請を国交省に行った。変更内容はB滑走路の北側1000メートル延伸(幅60メートル、延伸後3500メートル)、3500メートルのC滑走路新設(幅45メートル)、空港敷地の1099ヘクタール拡大(現況1198ヘクタール)、誘導路7471メートル(幅23メートル)の新設など。完成は29年3月末の予定。施設の変更許可に併せて、国交省は航空灯火、航空保安無線施設の設置も許可した。
B滑走路とC滑走路は進入復行区域が重ならないよう、南北方向に3325メートル離す。両滑走路の中心線はエプロンなどの関係施設の配置を考慮し、東西方向に420メートルずらす。拡大する敷地は一部が東関東自動車道(東関道)に重なる。整備計画を関係機関で調整し、東関道の一部はカルバート構造などに変更される見通しだ。国は空港整備勘定から300億円、財政融資4000億円を拠出し、機能強化を支援する。
成田空港会社は、需要増に対処するとともに今夏の東京五輪を見据え、継続して施設整備を行っている。高速離脱誘導路の整備と管制機能の高度化(20年夏ダイヤ含む)で年間約2万回ずつ、発着容量を計4万回増やし、残りの約16万回に機能強化で対応する。
高速離脱誘導路は、20年夏ダイヤから離着陸毎時72回に対応させられるようA滑走路6本、B滑走路1本の計7本の再編整備を進めてきた。離着陸に影響しない限られた時間の中で工事を効果的に進めるため、施工会社と舗装などの工程を綿密に調整。18年12月6日に5本、すべての整備を19年12月5日に終えた。
継続中の工事は多い。B滑走路の南側は駐機のエプロン、スポットの増設工事が五輪前の供用開始に向け、着々と進んでいる。管制施設は、エプロンを走行する航空機の誘導やスポットの割り当てといったランプコントロール業務を行う新タワーを建設中。20年中に完成する予定で、完成後は老朽化している1971年完成の旧管制塔を撤去する。
用地取得の同意率は98%に達している。国交省が施設変更を許可した1月31日、成田空港会社の田村明比古社長は、地権者をはじめ地元住民の理解に謝意を示した上で、「非常に大きな規模。新しい空港が一つ造れる事業で、身の引き締まる思い」と心境を語った。空港整備を巡る闘争の歴史を念頭に「信頼関係を構築してきた歴史の上に立って、これからも地域と歩む」とも。「これから伸びる需要は成田が受け止めないといけない」と事業の必要性を強調し、「できるだけ早く機能強化が実現することが重要」と決意を示した。
成田空港会社は空港内の労働者向けに、トレーラーハウスを利用した休憩所を整備した。施設建設に伴う手続きの負担などを考慮し、トレーラーハウスを導入することを決め、第1~3の各ターミナルビル近くに計4カ所配置した。労働環境を改善する取り組みの一環。既存の休憩所までの移動に時間がかかるエリアもあるため、効率よく利用してもらえるよう配置を工夫した。
快適に過ごしてもらえるよう仮眠できるスペースがある。貨物エリアには、弁当などを販売するフードトラックを入れている。航空需要が高い中で、発着時間が延びたことで、通勤用の臨時バスも運行させており、働きやすい環境づくりに一段と力を入れる方針だ。
残り50%掲載日: 2020年2月4日 | presented by 日刊建設工業新聞