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習得した技能を自国発展に/外国人実習生受入れ進める橋爪建設/心のつながり重視
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【特定技能への移行も視野】
とび工事などを営む橋爪建設(横浜市、橋爪朝三社長)は、社内に独自の組織を設け、ベトナム人技能実習生を積極的に受け入れている。労働力の確保という側面もあるが、それ以上に「一定の技能を習得した上で、無事に家族のもとに帰ってもらう。そして、その技能を自国(ベトナム)の発展に役立ててほしい」という同社の理念が、国籍を越えた友好な関係の構築に寄与している。培ってきた実績は特定技能への移行にもつながり、さらなる交流促進が期待される。
橋爪建設が外国人技能実習生に関心を持ち始めたのは、専門工事業として例に漏れず、技能労働者の入職難による若手不足と高齢化がきっかけ。同社の武藤聡取締役安全部長はベトナム・ニンビン省にある技能訓練学校を視察、「毎日厳しい訓練に耐え、家族のために日本で働きたいという訓練生を目の当たりにし、その思いに少しでも応えたかった」ことがベトナム人技能実習生の受け入れの決め手だったと振り返る。
受け入れ体制を構築するため、武藤部長と工事長をメンバーとする「ベトナム委員会」を社内に発足させ、技能実習生がストレスを感じないように就業・住環境の事前整備に努めた。文化や習慣などの違いから日本の生活に慣れるのは簡単ではなく、外国人に対する偏見に近い先入観からか、周囲の理解を得るまでにも一定の時間がかかった。
同社は、ベトナム人技能実習生の受け入れを開始した2014年度から家具・家電が整った寮を用意。生活音などから生じる騒音とともに、ごみの出し方にも細心の注意を払った。持ち込み時間や曜日ごとの分別方法を徹底し、委員会メンバーが毎晩寮に足を運び、分別状況を確認した。
技能実習生には日用品などの買い出し用に自転車を貸与しているが、運転中に警察官から職務質問を受けることもしばしば。武藤部長は身元保証人として、実習生一人ひとりに自らの名刺を渡し、警察官からの連絡に対応している。ただ、必要以上の取り調べなどに「『外国人だから』との(不明確な)理由で憤りを感じたこともあった」(武藤部長)と明かす。
一方、安全の重要性、あいさつや身だしなみを盛り込んだ安全衛生教育などが奏功し、工事現場では元請企業などからのクレームはほぼなく、「熱心に仕事に取り組んでおり、現場の人たちから褒められることばかり。生活面のミスや不注意はわれわれにも責任がある。ただ、実習生にちゃんと説明すれば理解してくれ、同じようなミスは起こさない」と日本人と同様に誠実であると強調する。
同社ではファム・ティ・ハインさんが通訳として従事している。ファムさんは技能実習生の作業前の手順確認だけでなく、現場にも足を運び、職長らが説明する高所作業時の要点なども的確に伝えている。社内で実施している技能実習生向けの日本語勉強会や日本人従業員向けのベトナム語勉強会では講師を担当、社内外で橋渡し役として活躍している。地元の子どもを対象としたベトナム語教室などを開き、異文化交流を通し地域社会とも触れ合っている。
日本人技能者や先輩実習生による個別指導のほか、花見や懇親会などを定期的に実施し、▽何でも相談できる環境と雰囲気づくり▽相互理解を大切にして尊重する--を推進している。
特徴的な取り組みでは、渡航費用を会社が全額負担し、2年が経過した技能実習生を一時帰国させる「リフレッシュ制度」を導入している。技能実習生にとって一時帰国は目標や夢を改めて見つめ直す機会になっている。
同社は実習生が持つ高いモチベーションを技能・技術の伝承に生かすため、とび技能士や仮囲いの組み立ての習得を後押ししている。
3日に都内で開かれた建設業労働災害防止協会東京支部のセミナーで、武藤部長とともに、民族衣装に身を包んだファムさんが登壇。同社と技能実習生との心のつながりを伝える姿は、自身がこれまで積み重ねてき努力とも重なり、多くの聴講者を引きつけていた。
閉会後、武藤部長は14-19年度までに「15人の実習生を受け入れている」と現状を説明した上で、「とび」が20年度以降に特定技能の受け入れ対象職種となることを見据え、帰国したベトナム人2人を「特定技能として受け入れる予定だ」と話している。
残り50%掲載日: 2020年2月5日 | presented by 建設通信新聞