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建設業はいまNo.6/衝撃・6
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【目を背けてきた実態との対峙/動き出す健全産業への転換】
時計の針を5年前に戻す。2013年6月に開かれた建設産業専門団体連合会、建設産業専門団体関東地区連合会と関東地方整備局の意見交換会で、建設生産システムに関わる陰の部分を問う発言が飛び出した。
「実態として、身分や住所を隠して働く労働者がいるのも事実。もし社会保険に加入させるなら辞める人間もいる。そのことを踏まえた決意がわれわれには必要だ」
発言者は大手専門工事業経営者。建設現場で本人確認や本人であることの真正性を求めると、工事に従事する労働者の一部は建設業界から逃げ出し、結果的に労働力不足になりかねないとの指摘だ。行政との公開意見交換で、一部とはいえ現場作業員の本人真正性に疑問があることに言及したのは極めて異例だった。
しかし、建設産業界の建設生産システムを支える労働力の一部実態を踏まえた指摘に同調する声はまったくなかった。当時は建設産業界を挙げて、社会保険加入促進への取り組みを始めたばかり。だから、「これまでの(素性を隠した現場労働者)問題よりも、社会保険加入促進を進めて待遇を改善することを最優先した」(意見交換に出席した専門工事業界関係者)。
その後、社保加入促進目標達成を見据えるように、建設労働者の技能と経験を見える化する“建設キャリアアップシステム”構想が具体化。17年11月には事業者の登録料や利用料などの料金体系が決定、システムの本格稼働へ着々と準備が整っていく。
社会保険加入の取り組みが進んだからこそ導入が実現した建設キャリアアップシステム。ただ同システム運用に対する期待・評価には建設産業界の中でも微妙な温度差が生じている。地方建設業界や中小建設業で生じた温度差、言い換えると不安や懸念は大きく分けて2つに集約される。1点目は、全国ゼネコンに自らが育成・確立した建設生産システムを構成する地域の専門工事業や所属する優秀な職長・職人を取られるのではないかという不安。2点目は、技能の見える化は職人の賃金アップにつながるが、これが専門工事業だけでなく地場中小元請けにとっては労務・人件費のコストアップにつながるという懸念だ。
いま、中小元請けを中心にした地方建設業界では、導入・運用が決定的となった建設キャリアアップシステムに強いアレルギーを示した傾向が徐々に和らぎつつある。
地元の大規模工事でJVに参加したり、下請けに回るケースが多い都道府県建設業協会加盟企業にとって、大規模工事で取引先となる大手・準大手ゼネコンなど日本建設業連合会加盟企業がキャリアアップシステム参加に強い意欲を表明していることを止めることができないからだ。
昨年11月、全国中小建設業協会近畿地区ブロック別意見交換会で、地元業界代表者は苦しい胸の内をこう打ち明けた。
「システムがレベル向上など技能者の意識改革になるのは間違いない。しかし経営者としては、ヘッドハンティングの不安があり、(技能者の)能力向上で賃金を上げなければならない。そうなれば経営を圧迫するのではというジレンマもある」
残り50%掲載日: 2018年1月15日 | presented by 建設通信新聞