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東日本大震災9年/復興・創生期間の最終年、「総仕上げ」へ全力
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>◇21年度以降の体制づくりも
東日本大震災の発生から11日で9年を迎える。この1年、被災各地では道路など基幹インフラの復旧・復興が着実に進展してきた。福島第1原発事故の影響で復興が遅れている福島県内でも帰還困難区域に指定された地域の避難指示が順次解除される。復興・創生期間(2016~20年度)の最終年となる重要な節目を迎え、官民を挙げ残された事業の総仕上げに全力を傾ける。併せて21年度以降の復興を支えるための体制づくりが進むことになる。
「復興のシンボル」と位置付けられる総延長約550キロの復興道路・復興支援道路は、全体の99%が開通または開通見込みとなった。岩手県の内陸部と沿岸部を結ぶ東北横断自動車道釜石秋田線(釜石市~花巻市)が全線開通したり、東北中央自動車道(福島県相馬市~福島市)が完成し常磐自動車道と接続したりと、震災後に新規事業化された区間が着々と開通してきた。
河川では直轄河川堤防と仙台港の南部海岸堤防の復旧工事がすべて完了。残る旧北上川河口部も20年度の完成を目指し、地域と一体となった整備が進む。
国土交通省はこうした基幹インフラと併せ、住宅再建に向けて各地域の実情をきめ細かく把握し、復興をさらに加速させる方針だ。円滑な施工確保のため、1月の復興加速化会議で赤羽一嘉国交相は、土木工事の積算を割り増しする「復興係数」の継続を表明。公共工事設計労務単価の上乗せ措置なども継続する。
□福島の生活再建拠点整備を加速□
復興を重点的に進める復興・創生期間が最終年に入る。基本方針に基づき地震・津波の被災地域では、進捗(しんちょく)が遅れている復興事業を加速する。福島第1原発事故の影響で復興の足取りが遅れていた福島県でも、基幹インフラ機能や生活再建拠点の整備などを進める。
環境省によると、除去土壌の仮置き場から中間貯蔵施設への輸送は1日当たり約2万袋で、保管容器ごとに全数を一元管理。20年度は前年度と同じ400万立方メートル程度を搬入する。原発周辺の帰還困難区域を除き、県内で発生した推定総量1400万立方メートル分の除去土壌などの搬入を21年度までにおおむね完了させる。
同時に仮置き場の原状回復を推進。20年度当初までに総数約1300カ所のうち、最大4割程度の原状回復を目指すとしている。中間貯蔵施設区域内にある「技術実証フィールド」では、除去土壌などを用いて減容化や再生利用に関する技術開発が進んでいる。
□慢性的な人手不足、地元業者で連携も□
大手ゼネコンは福島県内での作業が中心となってきている。福島第1原発、中間貯蔵、除染が大きな柱。1000人規模で作業に当たる現場も依然としてある。「数千人で動いていた時期よりは減っているが、今も相当数の人数が必要」(大手ゼネコン)という。
ただ建設不況だった震災発生当時と違い現在は各地で大型案件が動いており、自然災害も多発している。慢性的な人手不足で「東北だけを特別視できない。どこもギリギリの状態でやっている」(ゼネコン担当者)。業務を効率化し、人をやりくりしながら対処しているのが実情だ。事業活動として福島再生を後押ししようと模索する動きもある。
主要インフラの復旧・復興事業がピークを越えつつある中、福島では地元業者の連携を促す動きが出てきた。廃炉や再生可能エネルギー事業を行っているエイブル(福島県大熊町)らが建設関係を含む地域の企業の代表らと共に組合の組成といった連携策を練っている。同社の佐藤順英社長は「地域の経済を持続的に発展させていく環境の整備が必要」と指摘する。
□教訓風化させず、災害に強い国に□
安倍晋三首相は先月18日に「震災の大きな犠牲の上に得られた教訓を風化させることなく、相次ぐ自然災害の教訓をいかし、防災・減災、国土強靱化を進め、災害に強い故郷をつくりあげていく」との談話を発表。政府は昨年12月に復興・創生期間後の復興基本方針を閣議決定した。
復興庁の設置期限を20年度末から10年間延長。首相直属の組織として引き続き復興庁を置き、被災地の要望にワンストップで対応する体制を維持する。復旧・復興事業に充てる東日本大震災復興特別会計(復興特会)も維持。21年度から5カ年の復旧・復興事業の規模が1兆円台半ばになると試算している。
3日に復興庁設置法や東日本大震災復興特別区域法(復興特区法)など関連5法の一部改正法案を閣議決定。今国会に提出し、一部規定を除き21年4月の施行を目指す。
残り50%掲載日: 2020年3月11日 | presented by 日刊建設工業新聞