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  • 2018年業界を読む(7)

    【設備/総力戦で超繁忙に対応/「19年問題」に備える年】

     

     2019年問題--。建築プロジェクト全体の後工程を受け持つ設備業界内で、人手不足への危機感がかつてないほどに高まっている。躯体工事などの前工程が遅れ、18年内に予定していた竣工が19年にずれ込む。20年東京五輪をターゲットに、もとより繁忙度が最大のピークを迎える19年が、現在の想定を上回る超繁忙期になることへの懸念だ。担い手の減少局面で工事量が増大し、技術者・技能者ともに不足感が高まる中、働き方改革にも向き合わなければならない。将来を見据えつつも、ことしはまず、目前に迫る「19年問題」への備えが急がれる。

     

     複数の大手設備会社のトップからは「受注余力はほぼ上限に達している」「施工現場の繁忙度は限界に近い」「ここにきて人手不足が如実に顕在化している」などの声が上がり、既に施工能力がひっ迫している状況もうかがえる。

     

     間もなく到来する首都圏市場のピークを乗り切るためには「地方の協力会社にも来てもらわなければ対応できない」とする在京企業は少なくない。社長自らが全国を飛び回って協力会社に直談判したり、既に東京での宿泊先確保などの準備を進めている社もある。協力会社の人材採用や職人教育の支援、労務単価の引き上げや特別手当ての支給、工事車両や安全設備の元請け所有・下請け貸与など、協力会社との結びつきを強める取り組みも一段と活発化している。

     

     一方、施工管理を担う技術者も不足感が高まっている。長時間労働の是正や休日の確保を柱とする働き方改革とのジレンマの中で、各社は試行錯誤を重ねている。最近では特に、本社や支店に専門の組織を設けて、施工現場の事務作業などをサポートしたり、異なる事業部門間での人材の流動性を高める取り組みが目立つ。さらに1-3月の繁忙期対応として、総務や企画部門にいる元施工管理経験者を現場に送り込む動きも出るなど、社を挙げた総力戦が始まっている。

     

     複数の空調大手トップは「都内の再開発の一部では、建築工程の遅れが出始めている」と指摘する。五輪前までの供用という死守ラインのある案件は、工期延長がままならない。設備業界の長年の懸案である後工程への「しわ寄せ」問題は、現場の技術者や技能者に突貫工事を強い、人海戦術を迫られる会社には追加のコスト負担を生じさせる。「今後、利益率の低下は避けられない」と、労務費を始めとするコストアップに腹をくくるトップもいる。

     

     内勤正社員や派遣社員などを総動員してまで、各社が施工現場のサポート強化に乗り出すのは、働き方改革と確実・着実な施工を両立することだけが理由ではない。恐れることの1つが「技術者が計画より長く当該現場に拘束され、次に予定していた案件を受注できなくなる」という事態だ。ICT活用なども含めた現場業務の省力化・効率化は、今後の受注戦略のあり方など持続的・安定的な経営という観点からも重要になっている。

     

     資格や経験が求められる主任・監理技術者の数は受注戦略に直結する。この層を厚くするため、各社はキャリア採用に注力しているが、いまの労働市場では大手サブコンといえども苦戦は必至だ。ICTや人事施策を総動員して働き方改革に向き合いながら、現有勢力で最大限のパフォーマンスを発揮することが第1の関門になる。

     

     人材面の将来を考えた場合、一番確実性が高いのは「自前で育てて居続けてもらうこと」であり、若手教育の充実による早期戦力化と定着を促す会社の魅力向上がかぎとなる。今後訪れる大量退職時代には「人を抱えていること自体が仕事を呼び込む」として、将来的な国内建設市場の縮小予測を横目に、新卒の大量採用に乗り出している企業も存在する。そこには全体のパイは縮むものの、それ以上に企業の淘汰(とうた)が進むとの見立てもある。

     

     「建設業は、人材が経営の基盤であることに変わりはない」。足元で動き出した働き方改革や生産性向上の取り組みは、将来の生き残りをかけて、選ばれる企業になれるかどうかの試金石でもある。

     

           (赤島晃彦)

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    掲載日: 2018年1月17日 | presented by 建設通信新聞

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