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  • 建設論評・建築はインフラとの連携を

     建物とインフラとの関係を考えた。

     

     インフラの根源的な役割は人間の生命と財産や生活を守ることだ。それは人間社会を支えるために不可欠なものである。たび重なる大規模な自然災害によって改めて実感させられた。

     

     一方で建物は敷地内で自立している。無意識にはそう思われがちだ。しかし実際には、インフラのおかげで建物は河川の氾濫などから守られている。また電気やガスや上下水道などが健全だからこそ、建物では快適な活動ができている。しかし、インフラが崩れると一瞬にして建物の機能が失われることがある。そのことと背中合わせなのである。

     

     建物自らの地震対策は耐震改修などで少しずつ進められている。それに比べてインフラに対する意識や備えはまだまだ十分とは言えない。この分野で、建築専門家の働きが期待されている。

     

     例えば、建物を新築する場合を考える。設計者の役割は「建物に求められる機能と空間を設計図書に具現化すること」だ。だから専門家である設計者はインフラ途絶などの有事に際して、どの機能をどの程度確保し、どの程度の時間維持させる必要があるか、建物の機能に照らして注文主の考え方を引き出していく必要がある。

     

     その前提として、敷地周辺の自然災害リスクの程度やインフラの整備状況などを詳細に把握し、それを注文主に十分に理解してもらうことも大切だ。

     

     多くの企業や官公庁では、必要な活動が有事の際にも着実に実施されるように「事業継続計画(BCP)」が作成されている。それらも参考になるだろう。

     

     設計者は、有事の際に確保すべき建物の機能とその持続時間を取りまとめ、合わせてそれに必要な建物の仕様と費用(工事費と維持管理費)を検討し、全体を取りそろえて注文主に提案する。注文主はそれに基づいてさまざまな検討や意見交換を行い、最終的に建物と注文主にとって最も適切だと思われる対応策を決定するのである。

     

     近年、インフラ分野では防災教育が熱心に取り組まれている。大規模な自然災害に対していかに備え、いかに行動すべきか、一人ひとりが自ら考えることを促す教育である。非常に重要な取り組みだ。

     

     建物も人間の生活や活動には欠かせないものだ。だから建物側の視点からも、インフラの重要性と建物の有事への備えの必要性を、多くの人に理解してもらうことが重要になる。建物の注文主や管理者、使い手の意識が深まっていけば、建物側の備えも徐々に進んでいくに違いない。そのためにも、建築分野がインフラ分野と連携し、より総合的な防災教育に取り組まれるようにすることが必要なのではないか。ここでも建築専門家の働きが期待される。(侑)

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    掲載日: 2020年3月25日 | presented by 建設通信新聞

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