当サイトについて 採用ご担当者様
会員登録はこちら 求人検索

建設技術者向けNEWS

建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!

  • 建設論評・これは戦争だっ!

     標題は、米国のトランプ大統領が、新型コロナウイルスの対応に向けて、国民に告げた台詞(せりふ)である。

     

     革命、クーデター、テロ、大恐慌などの中で、最も刺激的な戦争を挙げたことは、決して大袈裟なことではない。モノを生産したくても原材料が入ってこない、労働者も出勤してこない。モノを売りたくてもお客の姿がない。まさに戦時下と同じ状態である。

     

     そもそも、法律、条令、規約、約款などは平穏無事な状態を前提にしているから、想定外の事態が発生した時、上に立つ者はその対応をめぐって 鼎(かなえ)の軽 重を問われることになる。手遅れにならないように、蛮勇を振るって采配を揮(ふる)うのは当然である。蛮勇とは、独断とか手続きを欠いたとの批判は筋違いということだ。

     

     1970年代のオイルショックで発生した物価高騰の際には、閣僚や次官級では手に負えずに首相自ら対応せざるを得なかった。今回も、安倍首相が陣頭に立って判断せざるを得なかった。

     

     専門家の説くところでは、密閉された空間、密集した人混み、近接した状態で交わされる会話に感染の恐れがあるという。そして、高齢者や病気持ちはその確率が高いと言われる。生憎(あいにく)なことに、建設産業に従事している人たちやその職場環境には該当するところが多い。

     

     最近、所管の官庁が業界団体を通じて企業各社の意向を問うたところ、建設業界では工事中断を申し入れた企業は非常に少なかったそうだ。

     

     建設会社の対応が難しいことは、内勤者たちと現場で働く人たちとで職場環境や対策が異なることにある。

     

     内勤者は時差出勤や出社禁止の措置を取っても、在宅勤務、テレワークなどの対応策を取ることで、業務を続けることができる。いずれも、働き方改革で推奨されていたものだが、企業によっては実行に踏み切れなかった。このたびの騒動によって実行に踏み切る動機付けになった、との見方がある。

     

     一方、現場で働く監督員や作業員たちの出勤を禁止する措置を取ったら、現場の作業はすべてストップして工事中断に追い込まれてしまう。

     

     労働安全衛生法とその関連の条例をひも解いても、職場の感染対策に言及がない。現場の所長や責任者は困惑していることであろう。この対処に備える規定が必要になるだろう。

     

     このことは、標準請負契約約款でも同じである。工事中断は、即、工事代金支払い停止に陥ってしまう。工事が止まっても生活費は必要だから、下請けの従業員たちにとって死活問題である。それは困るから工事の継続を強行するだろう。すると感染者が増えて、その影響が現場の外に拡大する恐れが出てくる。こうなったら社会問題である。

     

     工事中断に迫られた場合、こうした状態に陥らないように、契約放棄をしない前提で人件費や労務費の相当額を仮払いし、その担保として履行保証を差し入れるなどのやり方が考えられる。さらには、大規模かつ長期的な災禍に備えた交付金などの制度が必要であろう。

     

     いずれにせよ、災いは奇貨として、教訓にしなければならない。そして、この災禍が喉元(のどもと)を過ぎても、その熱さを忘れないことである。 (小)

    残り50%
    ログインして続きを読む 会員でない方はこちらよりご登録ください

    掲載日: 2020年4月2日 | presented by 建設通信新聞

前の記事記事一覧次の記事