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2018年業界を読む(9)
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【技術の深化へ投資広がる/技研拡充、作業船新造相次ぐ】
地盤改良、構造物基礎、浚渫などを主体とした特殊土木分野では、将来に向けた設備投資が活発化し始めた。堅調な国内建設市場を背景に、各社の業績は右肩上がりに推移する中、トップからは「好決算の続くいまこそ、経営基盤の強化を進める」との声が相次ぐ。積み上げてきた内部留保を成長投資に充てる流れが強まっている。
技術研究所などの整備拡充に動くのは地盤改良、基礎、法面などの工事を手掛ける企業だ。到来するインフラ構造物の維持更新需要をにらみ、新技術の確立とそれに対応した人材の確保に乗り出すことが狙い。国土交通省が旗を振るICT活用に対応する流れも強まり、各社とも技術開発のステージをワンランク上げようと動き出した。
ことし9月の完成を目指して埼玉県蓮田市に蓮田総合センターを整備する日特建設は、寮や宿泊施設の機能も併設し、人材育成から技術開発に至るまで幅広く対応する。つくば市に技術開発の推進役を担うR&Dセンターを完成させたライト工業は、外部識者にもスペースを提供し、共同による研究開発を推し進める。不動テトラは茨城県土浦市の総合技術研究所に多目的試験フィールドを新設し、技術開発に向けた試験地盤の整備機能を強化した。ゆくゆくは開発部門も集約する計画だ。
「大切なのは技術をいかに深化させるか」。そう鈴木和夫社長が強調するように、ライト工業は保有技術の省人化や省力化に向け、ICTプラットフォームとの連携を推し進める。今後ニーズが高まる法面補修分野への対応を強める日特建設の永井典久社長は「まずは健全度の診断手法確立を急ぐ」考えだ。不動テトラの竹原有二社長も「既設構造物の補強や耐震化に伴う地盤改良技術の確立が急務」と焦点を絞り込む。
全方位で土木工事と向き合う竹中土木ではリニューアル、IT、地盤改良の効率化に技術開発の軸足を置く。竹中康一社長はロボットなどの先端技術も「異業種と連携しながら取り組む」と力を込める。地下の総合エンジニアリング会社を標榜するケミカルグラウトでは、立和田裕一社長が「できなかったことを実現する技術を持ってマーケットを広げる」とし、研究開発費の予算枠を引き上げる。
施工機械を拡充する動きも活発化してきた。特に作業船が工事の生命線となる港湾分野では新造の動きが鮮明になっている。浚渫工事には安定的な対応が求められるが、さらなる業績拡大には新たな領域への対応が不可欠。各社は新事業領域として洋上風力発電施設や海底資源開発などへの対応強化に乗り出す。
海洋開発分野への進出をにらみ、東洋建設が新たな自航式多目的船の本格運用を始めたのに続き、五洋建設は洋上風力発電施設工事への対応を強めるため、SEP型多目的起重機船を建造中。若築建設も5社共同でSEP船の建造を検討中だ。みらい建設工業は補修改修市場をにらみ、新会社の設立とともに、洋上風力関連工事を担う作業船の建造についても検討を始めた。
東亜建設工業のように新技術への対応強化に向け、作業船の新造や改造などを計画する動きも広がる。あおみ建設は積み上げてきた内部留保を成長投資に充てる計画で、新事業開拓に向けたM&A(企業の合併・買収)とともに、他社との共同による新たなグラブ浚渫船の新造も計画する。国土交通省が直轄の浚渫工事へのICT活用に乗り出したことで、作業船に搭載する最新の計測機器システムを拡充する動きも拡大しそうだ。
特殊土木分野では成長投資に合わせ、技術の差別化時代が幕を開けようとしている。
(西原一仁)
残り50%掲載日: 2018年1月19日 | presented by 建設通信新聞