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  • 2018年業界を読む(10)

    【建材/リフォーム促すブランド戦略/住設機器にもIoT化の波】

     

     住宅市場は転換期を迎えた。相続税対策で盛り上がった賃貸住宅市場も沈静化し、少子高齢化により人口が減少する中で、新設住宅着工も減少局面に入った。新築住宅の収益が拡大する見込みも薄く、住設建材メーカーは難しいかじ取りを迫られている。

     

     日本では既存住宅の断熱性能や快適性向上に投資せず、新築に建て替える傾向が強い。欧米に比べてリフォームに使う投資額はかなり低い。しかし、新設住宅よりも、既存ストック住宅のほうが母数は大きく、需要の掘り起こしに成功すれば、大きな収益源となる可能性はある。

     

     「『快適に過ごしたい』『健康でありたい』『安全でありたい』という要求に応えることが業界全体のテーマ。特に、高齢化に伴い(リフォーム)需要は増えるはず」と語るのはLIXILの瀬戸欣哉社長。リフォーム関係の展示会では、家の中の温度差による「ヒートショック」の事故を防ぐ効果などを説明し、アピールした。合併前の「トステム」「INAX」などの名称も復活させ、自社ブランドの指名買いを目指す。

     

     対するTOTO、大建工業、YKKAPのTDY連合は、3社のコラボレーションショールームを拡充、札幌から熊本まで全国12カ所に展開した。窓やドア、水回りや床、壁などの製品を、リフォーム施工後が想像しやすいように室内を再現した空間展示で見せ、リフォームのメリットをアピールする。

     

     国土交通省による住宅ストック循環支援事業などを追い風に、各社はテレビコマーシャルを始め、広告宣伝にもアグレッシブに費用を投入する。成功すれば、新設重視の現在と違う展開も期待できる。

     

     非住宅市場に目を向ければ、2020年東京五輪が近づき、関連施設に向けたスペック営業活動が最盛期を迎えている。「天井耐震システムの受注が決まった。ほかにも確定した納入先に向けて図面を作成中だ」と話すのは大建工業の億田正則社長。外国人に自社製品をアピールする機会にもなることから、関連施設に向ける各社の視線は熱い。ホテル・宿泊施設に向けた高級ゾーンの建材の提案も進む。

     

     IoT(モノのインターネット)技術の活用が産業界のさまざまな分野に波及する中、住設機器をIoTネットワークに組み込むことで快適かつ安全・安心な住空間を提供する取り組みも始まった。TOTOはNTTコミュニケーションズなどによるIoT通信技術のセキュリティー実験に、開発中のトイレを提供した。10種類のセンサーがにおいや人の存在、行動などを感知し、健康状態や安否確認情報を発信する。

     

     LIXILも介護施設での見守りや独居老人の安否確認を目的に、開閉を検知しクラウド上に状況を報告、異常があれば通報もできるドアなどを開発中。YKKAPは「未来窓プロジェクト」として透明有機ELのディスプレーを貼った窓を発表した。AI(人工知能)スピーカーと連動し、アプリで家電を操作したり、テレビ電話をかけたり自動的に換気する機能を備えている。

     

     今後さまざまなシーンで、IoTデバイスを組み込んだ建材が登場する見通しだが、住まい手のプライバシーの観点にも考慮した議論も必要とする指摘もある。

     

    (梶川知子)

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    掲載日: 2018年1月22日 | presented by 建設通信新聞

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