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次世代建設経営戦略研究講座、集中連載 (4)~令和の日本はストック利活用による経済発展の時代~
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【生産性向上のカギは使いやすいスマホアプリ/欧米はマネジメントの中核部分に人間力活用/寄稿 次世代建設産業モデル研究所所長 五十嵐 健氏】
デジタル環境が急速に進化する中、米国や中国・シンガポールなど経済発展の著しい地域では、産業界が一丸となってデジタルプラットフォームの構築に取り組んでいる。5G(第5世代移動通信システム)時代が到来する令和の時代は、日本の建設産業にとっても正念場になるだろう。
この状況に対応するためには、日本が強みとしてきた人間力に軸足を置いたやり方を、ITツールを基本にした欧米型に切り替える必要がある。これについて、さまざまな分野で利用が進み、日常生活まで変えようとしている、スマートフォンの地図情報を例に説明したい。
日本で普及した住宅情報地図は、人による調査データが基本となっている。精緻で詳細だが調査範囲が限られ、製作に時間を要する。これに対しグーグルの地図情報は衛星写真や車載カメラのデータでつくられている。当初は精度が荒かったが、技術の進歩とともに人の能力を超えた。その地図に必要に応じて飲食店などの情報コンテンツをのせて使う。
地図情報はそのプラットフォーム(箱)であり、店情報はコンテンツ(中身)である。この2つの組み合わせは簡単に拡張が可能で、場所や目的に応じて中身を追加変更できる。それがいまの発展につながっている。
中身であるスマホアプリの充実は、箱であるスマホの価値を幾何級数的に高めていく。そのスピードと広がりも魅力だ。前回述べた建設系産業連鎖の構成もまったく同じだ。基本ルールさえ決めておけば、後は自動的に進化発展していく。
そのことをこの図の輪の1つであり、私たちの事業領域である建設ブロックに着目して考えてみたい。そうすることで建設産業のいまの課題とそれをブレークする方法が見えてくるはずだ。
市場が拡大しないゼロサム経済の下で、建設産業の課題はi-Construction(以下i-Con)が目指すIT活用による生産性向上になる。その目的は、生産性を2割向上させ半分を就業者に配分し、残る半分を再投資に回す、それが産業発展の源泉になるとの考えだ。その中で働き方改革は、生産性2割向上を考える改善運動であり、建設キャリアアップシステムはその人的資源の能力を向上するための手段で運動のモチベーションになる。この仕組みを、ITを活用して合理的に進めることがi-Conに他ならない。
そのためにはこの仕組みを分かりやすく可視化する必要がある。建設プロジェクトの場合、全体工程があり、それを部分工程に展開し、さらに日々の行程を確実に実践してムダ・ムラを無くす。その管理にIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を使い、予実のトレーサビリティーを高めて次に生かす。それがi-Conの目指す姿だ。しかし現場監理者のスマートフォンにその管理アプリはあるだろうか。依然あるのはPCタブレットの工程表だ。
スマートフォンには顔認証ソフトや位置情報が付いている。これを使えば、いつ誰が現場に入り、どこを移動したかがわかる。中国で普及している無人店舗のアプリが、そのまま建設現場の作業管理にも使えるはずだ。建設キャリアアップシステムは工事管理の精度を上げるツールでもある。これを人のキャリアと作業状況に応じて柔軟に調整・実施していくのがIT管理になる。それがいまの現場でどれだけ活用できているだろうか。
さらに、調達業務や安全管理、会計管理などさまざまスマホアプリを開発してつけ加え、それを現場会議の場で活用することで、工事全体の生産性向上が初めて可能になる。これまでは日本が得意とする元下一体の突貫力でその不足を補ってきた。しかし、いまの人手不足と働き方改革の下でいつまでその力が発揮できるか心もとない。
本来のやり方としては、現場会議での生産性向上と工程管理の精度向上を目指すべきだろう。欧米ではまず合理的な工事のやり方を考え、その上に科学的な工程管理プログラムをつくり、そこにデータを蓄積し精度を上げている。こうした建設産業に共通するプラットフォームを充実していくことも重要になる。
たぶん、いまのIT技術の進歩を考えると、早晩日本の強みであるアナログ対応力もグローバル化と人口減少の中で、消滅する時代が来るかもしれない。
残り50%掲載日: 2020年4月22日 | presented by 建設通信新聞