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  • 一人親方の現状と処遇改善は/柴田徹平岩手県立大学講師に聞く/安定就労化へ具体策を

     現場技能者の確保と処遇改善が建設産業にとって大きな課題となっている。約65万人と建設現場技能者のほぼ4分の1(厚生労働省、16年調べ)を占める一人親方は、個人請負事業者との位置付けで労働者としての保護を受けられない。労災事故件数にも数えられず、社会保険加入促進の対象からも除外。零細事業所が社会保険料の支払いを逃れるため、「非自発的」に一人親方への転身を余儀なくされるケースも増えているという。一人親方に関する調査研究を続け、今年2月に『建設業一人親方と不安定就業』(東進堂)を著した柴田徹平岩手県立大学社会福祉学部講師に、一人親方の現状と処遇改善の方向性を聞いた。(編集部・辰巳裕史)
     
     --一人親方の実態が昔と大きく変わってきていると聞く。
     
     「かつての一人親方は、大工の棟梁(とうりょう)に代表されるように、一戸建て住宅新築などの工事一式を施主から直接に請け負った。自ら積算や設計、職人の手配、施工を行う『材料持元請』であり、現場技能者がキャリアアップする目標でもあった。だがこのような就労形態の一人親方は東京都内で17・9%(11年実績、全建総連東京都連調べ)にとどまり、全国でも3割程度まで下がっている」
     
     「都内では『材料持元請』以外の、材料を持ち元請企業から下請として工事を請ける『材料持下請』の一人親方が25・5%を占め、材料を持たず、労務だけを請け負う『手間請』が56・6%と過半数を占めるようになっている(同)。判例や国の通達などによる“労働者性”の判断基準によると、手間請のうち日給月給が適用される場合は、常用型の労働者と見なされる。全国では一人親方全体の35・2%がこれに該当し、『偽装請負』の疑いが強いと考えられる」
     
     --一人親方の所得水準や処遇はどうなっているか。
     
     「生活保護基準以下の一人親方世帯は標準3人世帯(夫婦と子ども1人)で43・1%、家族賃金を含めた世帯所得ベースで見ても32・4%にも達していた(11年実績、埼玉土建一般労組生活実態調査)。月収100万円超は1%に満たない。就業の不安定化や長時間労働化も進んでいる。社会保険料の事業主負担回避などコスト削減を目的にした、企業による一人親方活用が進んできたことが背景にあるとみている」
     
     「一人親方へのヒアリングでは『入社から40歳くらいまでは源泉徴収があったが、不況で源泉徴収されなくなり、(外注化によって)一人親方になった。源泉徴収されないだけで仕事内容は同じだ』『見習いとして就労し正社員化を要求したが認められなかった』などが代表的な声だった。若い世代ほど非自発的に一人親方化した事例が目立つ。また、経験年数を重ねても収入が頭打ちになっているのも大きな特徴だ」
     
     「一人親方の長時間就業化という傾向も見られる。請負工事を確保するため、見積もりや設計に費やす時間が増加し就業時間が長期化しているようだ。パワービルダー(低コストの建売住宅供給企業)などの現場で、コスト縮減のため工期の延長がなかなか認められないケースもある。工期などで対等な交渉ができる一定の独立性を持つ一人親方がごく限られるといった実情が、長時間就業の背景にあるのではないか」
     
     --処遇改善に向けた政策課題は。

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    掲載日: 2017年8月31日 | presented by 日刊建設工業新聞

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