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建設業はいま・衝撃10
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【行政の覚悟 目的は地元活性化/企業と住民の好循環目指す】
2017年3月、経団連と日本労働組合総連合会(連合)による「罰則付き時間外労働の上限規制導入」の合意は、歴史的出来事とも言われた。いま、同じことが建設産業界でも起きつつある。プレーヤーは、事業主団体である地元建設業協会や地元建設企業と建設職人が加盟する労働組合だ。
経団連と連合の 歴史的合意のけん引役を担ったのは安倍政権だが、建設業協会や地元建設企業と労働組合の間を取り持ったのは、地元自治体であり、首長だ。政治や行政が間に立って、地元建設企業経営者と労働組合に加盟する建設職人が連携することで、「人口減少+高齢化」という日本の構造的課題に対応するために掲げた、働き方改革を進めるという点では同じ構図と言える。
17年11月8日、東京都大田区庁舎の区長室につながる庁議室。予定されていた『労働協約締結』報告式に臨む参加者には緊張感が漂っていた。
全国初の労働協約締結を報道機関に発信した大田区の担当者はもとより、初めて足を踏み入れる庁議室で、事業主団体と同じテーブルについた労働組合にとっても、すべてが異例なことだった。
松原忠義区長も 、あえて区長室直結の庁議室で報告式を開いたのには、区長自らが地元大田区の活性化・好循環の流れをつくることを目的に、地元建設業界と組合をつなげる接着役を担ったことが背景にある。
大田区が全国初とした、地域密着型労働協約とは、労働組合だけに認められている「労働者供給事業」を大田区で始めることを指す。
具体的には、大田区建設協会(60社)の会員企業が受注した工事で、一定期間にわたってある職種の職人が不足しそうな場合、全国建設労働組合総連合東京都連合会(全建総連都連)傘下の、大田区内の5つの職人組合が職人を派遣する仕組み。労働者の派遣が認められていない建設業では、「労働者供給事業」だけが唯一合法的な労働者派遣となる。
大田区長がけん引した労働者供給事業最大のポイントは、区内工事は区内企業が受注し、区内在住職人が作業を行う業務循環を区内で極力完結させることで、地元活性化につながるという新たな好循環を生み出すことにある。
これまでは、大田区内の工事でも職人が足りない場合、区外から職人応援を頼む一方、大田区内の組合加盟職人は区外の現場で作業をすることも頻繁にあった。
また、企業経営者で構成する建設協会にとって以前ほどではないにせよ、労働組合は警戒すべき相手という意識が根強く残っている。賃金や待遇などで対立する関係でもあるからだ。
しかしいま、対立するさまざまな課題を横に置いて、地元中小建設業と労働組合に加盟する建設職人が連携しようという動きが大田区を筆頭に首都圏自治体で動き始めている。
大手・準大手ゼネコンなどが中長期を見据えた生産性向上や働き方改革の結果として生まれる新たな生産システム、言い換えると供給力維持を自前の努力でそれぞれ再構築する動きが進む中、地元企業や地元在住職人をどう生かせば地元の活性化につながるのか。地元建設業支援へ行政は新たな視点で踏み込み始めた。
残り50%掲載日: 2018年1月23日 | presented by 建設通信新聞