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  • 連載・次世代建設経営戦略研究講座、集中連載(6)~令和の日本はストック利活用による経済発展の時代~

    ■寄稿/次世代建設産業モデル研究所所長 五十嵐健氏

     

    【安心・安全支える地域建設業の役割拡大】

     

     最終回である今回は、地域建設業の役割とIT対応について考えたい。地域における建設業に期待される役割として、(1)地域インフラの整備・維持(2)災害時の緊急対応(3)地域の社会・経済を支える(4)地方創成を支える--の4つが挙げられている。温暖化の進行による自然災害の多発や地方人口の高齢化を考えれば、この役割は今後さらに増大していく。

     

     しかし、若年人口の減少と自然災害の激甚化が進む中で、担い手の頑張りだけではもはや限界にきている。その壁を突破するカギが建設産業の政策課題である、i-Construction(以下i-Con)推進や働き方改革、建設キャリアアップシステムになる。産業側もそれを十分理解し、その推進に努めている。しかし、残念ながら現在は踊り場の状態にあると考えている。

     

     i-Con推進はIT活用による生産性向上で、その目的は生産性を2割向上させ、半分を就業者に配分し、残る半分を再投資に回す。それが産業発展の源泉になるとの考えだ。その中で働き方改革は、生産性2割向上を考える改善運動であり、建設キャリアアップシステムは人的資源の能力を向上するための手段で運動のモチベーションになる。

     

     そのために建設系ブロックチェーンのデジタルシステムを活用して連携させ、図のようにそのサイクルを循環させながらレベルアップし好循環をつくるデータ連携が有効だろう。しかし、現状の工事現場では、その負荷が管理職員に集中している。そのため4週6休体制を実現しても若手職員の仕事は休日も続くことになる。

     

     建設現場は元下の重層構造で構成されている。元請会社のタブレットを持つ社員はこれで現場管理を行っているが、下請けの個々の作業員とのデータ連携はできない。しかも各社が開発したソフトは日本人の得意とするアナログ型のため、個人ベースの暗黙知が多く業界や職種共通のツールとはなりにくい欠点がある。

     

     中国やインドなどインフラ整備が遅れている地域の方が、日本よりスマホの利用は進んでおり、そのアプリも整備されているように感じる。

     

    【インフラ管理へスマートセンサー活用】

     

     建設産業の数は50万社で従事者は500万人になるが、現場では職人の多くがスマホを持っている。スマホアプリのマーケット規模としては十分だ。それにスマホは現場でも持ち運びが可能で、図面や現場状況の確認の操作が作業中でも可能だ。

     

     さらに今後活用が期待されるIT技術としては、スマートセンサーを利用したインフラ構造物の診断がある。これはICチップを内蔵したセンサーを既存建物の構造体に貼ることで災害後の強度を測定し使用の可否を判定するシステムで、現在その技術は実用段階に達している。

     

     このセンサーを建物に取り付けることで建物の信頼性が高まり、中古不動産の利用や取引が進む。また、堤防や見えにくい下水道の管理に活用することで災害時の都市や地域の安心・安全性も高まり、関係者の作業の省力化と高度化に役立つ。

     

     近年、日本の犯罪検挙率が上がっている。街中にある映像モニターの情報を分析して犯罪の実像を把握し、それに警察の知見と組織力を結集して犯人を検挙しているためだ。

     

     巨大プロジェクトのマネジメント能力や人の動員力、資金調達面では欧米や中国の巨大企業に及ばない面もあるが、暗黙知の共有と個人の人的能力の高い日本の建設産業にとって、地域ストックの利活用による生活の安全と経済活力の拡大が令和の注力分野になる。昨年から日本でもデジタルクラウドのインフラであるBIM/CIMの構築が進められている。その早急な整備に期待したい。

     

     令和の日本は、明治維新以来指向してきた欧米型のストック形成期を終え、その蓄積を生かす社会の入り口にあり、建設産業はその最前線に位置している。関心のある方はライブドアブログ「ストック型社会の目線で」を参考にしていただきたい。

     

     なお、次回は7月ごろ現下の環境変化に対応した経営戦略検討のポイントについて述べたい。また以前5月20日で予告した早稲田大学での「BIMを活用した生産性向上シンポジウム」は、コロナの影響で開催が延期となった。今後の状況を見ながら再度企画したい。 (おわり)

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    掲載日: 2020年5月27日 | presented by 建設通信新聞

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