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  • フォーカス「コロナと建設事業」/翻弄されるプロジェクト

    【悩む発注者 不安の受注者】

     

     新型コロナウイルス感染拡大防止を最優先事項に掲げる行政は一方で落ち込む経済活動復活への道筋にも悩む。コロナ対応に腐心しながら経済低迷への不安を抱える構図は、建設企業も同じ。コロナ禍のなかでもインフラ整備を進めるさまざまな取り組みが始まっている。

     

     「中止を前提にしたものではない」

     

     静岡市の田辺信宏市長は4日の定例会見で、昨年4月の市長選挙の公約で掲げた新清水庁舎など3つの大型建設事業の停止について、「コロナの収束状況、経済の回復状況を見定めてリスタートを切りたい」と、当初予定よりも時間はかかるものの事業を推進する考えを強調した。3事業は庁舎以外に海洋文化施設と歴史文化施設の建設で事業費は計400億円に上る。

     

     その上で田辺市長は、「公共投資を積極的に投じることで経済を活性化し、雇用の確保を訴えてきたので、(停止は)断腸の思い。いったん止めたことに大きな意味がある。コロナ対策や社会経済活動の活性化に予算の配分をしていくことで市民の理解をお願いしていきたい」とした。

     

     コロナ対応に追われる自治体が予定していた公共事業の執行を一時停止し、コロナ対策に振り向けるのは、静岡市だけではない。地方自治体は国からの交付金配分だけでは独自のコロナ対応ができないため、予算を組み替える自治体が相次いでいる。5月7日、熊本市は市役所本庁舎の建て替えや市電延伸など大型事業の一時中断方針を決めたほか、新庁舎建て替え基本計画策定支援業務の公募型プロポーザルの中止も発表。コロナ対応に伴う財政悪化抑止に先手を打った形だ。

     

     国土交通省の各地方整備局も、コロナ禍の中での事業の適正執行という視点から特別対応を敷く。中部整備局は「9月ごろまでの特例措置」として上期の早期執行を目的に、維持修繕工事などで指名競争入札を活用する方針を表明した。コロナ対応で、受発注者間の接触機会が極端に減少、入札契約の事務作業が遅れていることが背景にある。

     

     また関東整備局は災害復旧で既に導入した指名競争入札の枠組みであるフレームワーク方式を、一般土木のC等級、B+C等級、維持修繕工事へ拡大する。

     

     一方、2019年度補正予算で、土木(公共事業関係費)と建築(その他施設費)合わせ2兆2000億円に20年度予算を合算した公共事業費(土木と建築合算)総額で約10兆円確保した公共事業費を前にしても、事業整備の担い手である建設業界、特に中小建設企業からはコロナ禍の影響による今後の不安は高まる一方だ。

     

     今年度の国の公共事業予算が高水準の規模で確保されているとはいえ、中小企業が公共事業受注の主戦場としている、自治体で予算を組み替えてコロナ対応を優先する傾向が強いことが理由。

     

     また建設市場の過半以上を占める民間建築工事でも、直近の建築着工床面積も減少局面にはないが、先行きの不安は募る。

     

     今回の新型コロナウイルス感染拡大が世界経済に与える影響として引き合いに出される、08年リーマン・ショックとその後に起きた業界内の出来事を中小建設企業経営者は忘れることができない。業界内では、結果的に「利益なき繁忙」に追い込まれた熾烈(しれつ)なダンピング(過度な安値受注)が企業規模にかかわらず蔓延。さらに個社は元請け・下請け問わず企業存続のため、社員、職人のリストラに踏み切った。

     

     この時の弊害が、社員の年齢構成のアンバランス、社内教育システムの機能不全、モチベーション低下、人材確保の難しさなどにつながる。リーマン・ショック後の同じ轍(てつ)を踏まず、どうコロナ後に対応するのか。24年4月から適用される罰則付きの残業規制を柱にした働き方改革、生産性向上と建設キャリアアップシステム本格稼働など新たな取り組みも迫られる中、建設企業はあい路の入り口に立たされている。

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    掲載日: 2020年6月18日 | presented by 建設通信新聞

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