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  • 連載・建設業はいまNo.12/衝撃

    【蘇る苦い経験 職人月給制の頓挫/働き方、社保のダブルパンチ】

     

     2017年の暮れも迫った12月15日。日本型枠工事業協会(三野輪賢二会長)が『型枠大工雇用実態調査報告書2017年11月』について開いた会見を、複数の地方型枠工事業経営者が緊張した面持ちで傍聴していた。

     

     傍聴していた一人、日本型枠静岡支部長を務める入月建設の入月一好社長は、「地方の 専門工事業界でも最大の関心事は社会保険未加入問題。(加入は)不安でもあり負担でもあるが、希望でもある」と置かれた立場の複雑な心境を語った。

     

     同社は建築を主体にした型枠工事の専門工事業。大手ゼネコンとだけ取り引きしているわけではないため、「社保負担分を元請けからきちんと確保できているかと問われれば、そうでもない」状況が続いている。さらに「社保加入促進の元請け指導と言っても、紙1枚の形ばかりの文書が来るだけのケースもある」のが実態だ。

     

     静岡市内を中心に業務を行う入月社長が、日本型枠の会見をわざわざ傍聴していたのは、「社保加入促進を希望」する一方、社保加入とは別の不安が頭をもたげていることが背景にある。

     

     建築の売上高営業利益率0.85%に対し、売上高1億円未満企業の同利益率はわずか0.05%、生産性を示す1人当たり売上高と同付加価値額はいずれも平均額以下。この数値は、東日本建設業保証が取引企業から提出された決算書をもとにまとめた『建設業の財務統計指標 2016年度決算分析』にある静岡県の建設企業の財務指標だ。

     

     そもそも静岡県は、製造品出荷額が全国4位(12年)のものづくり県。企業の設備投資が民間建築需要をけん引し、土木を中心とした公共事業でも地元企業に配慮した調達を進めていた。近年は、リーマン・ショック後の設備投資手控えから再び民需に復調の兆しが見え始め、公共事業も静岡県内の工事量は増加してきた。

     

     にもかかわらず、静岡県内の地元元請企業の収益は、他県と比べ低水準にとどまっていることが、静岡県内専門工事業の「社保加入原資を確保できるのか」「働き方改革の 取り組みに伴うコストアップを元請けが理解してくれるのか」といった不安につながっている。専門工事業経営者にとっては、社保加入と働き方改革の取り組みが同時にのしかかっている。

     

     別の不安もある。「型枠大工で大きな生産性向上は望めない。小さな積み重ねしかない」「(仕事量拡大へ)RC造のメリットを業界内で議論しているが、居住性の良さだけで本当に推していけるのか」(入月社長)。今後の市場規模拡大、生産性向上への取り組みなど不安の種は尽きない。

     

     いま、全国各地の専門工事業経営者は元請けの規模別や地域ごとに異なる収益率の動向に敏感になっている。なぜなら、社保加入によって社員化が加速することは、専門工事業も働き方改革に向き合わざるを得ず、必要な経費を元請けから確保する必要があるからだ。

     

     バブル崩壊後、長年にわたって縮小してきた建設市場の中で生き抜いてきた専門工事業経営者は、過去の苦い経験と時代が変わる予兆が交錯する。

     

     入月社長はバブル崩壊後、自らが取り組み頓挫した『完全月給制』について、「このことを(若手経営者たちに)伝えていくのは、われわれ世代の役割」と強調する一方、「今後、型枠大工の仕事は大きく変わる」と話す。

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    掲載日: 2018年1月26日 | presented by 建設通信新聞

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