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  • フォーカス・異例の「継続会」

    【株主総会にもコロナ影響/転換点は出勤7割減要請】

     

     3月期決算の上場建設企業にとって年に一度の重要イベント、株主総会がことしも問題なく終わりを迎えようとしている。ただ建設含む上場企業の株主総会開催に至るまでの道のりは例年とは異質の厳しさだった。新型コロナウイルス感染拡大が深刻化した時期と、企業の決算・監査時期が重なったことに加えて、政府のある要請が決算・監査業務関係者に大きな影響を与える決定打となったからだ。

     

     3月期決算の作業遅れ懸念が深刻化する1カ月以上前。法務省は2月28日付で、当初予定した時期に定時株主総会を開催できない状況が生じた場合の考え方を公表した。その後、政府は3月28日付で「3つの密」を避けることを全面的に打ち出した「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を公表。政府の対処方針を受ける形で4月3日に発足したのが、金融庁や経済産業省、法務省など行政と、日本公認会計士協会、企業会計基準委員会、東京証券取引所、経団連など関係者が集まった、新型コロナ禍の企業決算作業と監査などについての認識とあり方共有を目的にした連絡協議会だった。

     

     その中、3月期決算企業と決算作業と監査業務を行う監査法人や日本公認会計士協会を慌てさせる決定打となったのが、安倍晋三首相が4月11日に行った緊急事態宣言の対象7都府県の全事業者に対する「オフィス出勤者の最低7割削減」要請だった。

     

     安倍首相の要請は、政府からの「出勤者7割削減を実現するための要請」、4月13日の「在宅勤務等の推進要請」など、さまざまな形で関係省庁などを通じ各業種へ浸透していくことになる。

     

     さらに政府と関係者による連絡協議会は4月15日付で、有価証券報告書や四半期報告書などの提出期限を9月末まで一律延長したことを踏まえ、▽定時株主総会は6月末に開催することが求められているわけでなく、日程の後ろ倒しが可能▽株主総会の継続会(二段階方式)での計算書類、監査報告などの別手続き--について確認・決定した。事実上、政府が対応に苦慮する企業に、定時株主総会の延期や継続会、オンラインも活用するハイブリッド型総会の検討・導入を提示する形で支援姿勢を明確にした。

     

     政府の「出勤者7割削減要請」を契機にさまざまな支援が動きだしたのは、3月期決算企業と監査法人にとっての4月、5月という時期の重みが関係している。

     

     通常、3月期決算企業の決算作業・監査業務は4月から本格化する。企業に対し金融商品取引法は決算日から3カ月以内に有価証券報告書を提出することを定めている。また6月下旬に定時株主総会を開くためには少なくとも6月上旬に総会の招集通知を発送しなければならない。このスケジュールをこなすためには、5月の取締役会で計算書類などの承認が必要となる。

     

     しかし、ことしの4月は緊急事態宣言に伴う自粛徹底が始まるという異例の月だった。さらに3月期決算企業の法務、財務・計理部門と監査法人と監査人らは、金融庁からの「出勤者の7割削減」要請を実行した時に想定された、経理作業や監査業務の遅れという最悪の事態を恐れた。

     

     避けられない紙ベースの監査は「出勤者7割減」と同義語でもある「在宅勤務」の難しさに「移動制限」も加わり、監査法人にとって監査遅れへの懸念が拡大することになる。だからこそ政府の協議会は懸念を和らげるため4月15日付で、有価証券報告書提出期限を一律に9月末に延長することや、株主総会の延期や継続会などの対応を推奨する声明文書を公表。同日、日本公認会計士協会はこの声明を歓迎し、企業関係者と適切に対応するとした会長声明を公表した。

     

     ただ決算集計や監査業務の遅れの懸念はあっても、株主総会の延期や継続会に踏み切る企業は限定的にとどまった。

     

     4月上旬、ある建設企業トップは、閑散とした本社内でこう断言した。「確かに定時株主総会への対応は非常に悩ましい問題だ。でもどんなことをしても(延期など新たな対応は)避けたい」

     

     ある企業関係者は、新型コロナへの対応と個別企業の決算作業や株主総会という一大イベント事前準備が重なったことについて、「出勤者を大幅に削減することは規模が大きい企業ほど徹底して行ったのは事実。しかし在宅勤務にならず出社する社員が大半の部門があったのも事実だ」と話す。

     

     3月期決算企業にとって、総会延期や継続会導入企業を除けば、決算作業と監査業務、株主総会までの大きな山場を越えた。今後は新型コロナによる影響をいかに抑え、経済活動回復の果実を個社に取り込めるかが大きな関心事となる。

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    掲載日: 2020年6月30日 | presented by 建設通信新聞

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