建設技術者向けNEWS
建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!
-
建設論評・M&Aの増大に備えよ
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>建設業において、新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)により特に大きな痛手を被ったのは地方の中小企業であったようである。もともと、東京オリンピックなどの国家的イベントや都市の再開発で潤う東京を始めとする大都市と違い、さしたる恩恵を受けていない。その上、事業環境の厳しさを改善する力量が不足し、人手が集まらず、欲しい仕事も取り切れないという過去からの体質を引きずっているところが多いからである。
人についていえば、何より問題は経営者その人の問題である。本人が創業した場合はその高齢化が問題になるわけだが、優れた後継者が見当たらないことが多い。ある会社は、創業者亡き後を継いだ子息が社長とは何をするのかわからないため、ゴルフや会合に出て日を過ごしているという。これを心配した親類が相談に乗ろうとしたところ、社長から嫌われたため嫌になって去ってしまった。
創業者というと大体がワンマンであるため、周りを固める番頭クラスが育っていないことが多い。後継者は、前任の社長から見ると大体が未熟なものだ。社長は後継者を指名しながら、いつまでも心配で社長職を譲ることができず、後継者はいつになったら自分の出番になるのか待ちかねて不満を持つことがこれまた多い。これが自分の息子であればまだ思い切りもつきやすいが、そうでない場合にはさらにいつまでも現役で頑張るから死ぬまで譲らない。
また、幸い後を継いで社長になった時、例えば10年も社長修行をしてからであればともかく、周りの目を気にして消極的に、また反対にいいところを見せようと無理に積極的に出て失敗することも少なくない。こういうところに今回の新型コロナの災いが続いたとすると、仕事は減少、あっても進めにくい、人は集まらない、単価は下がるといういくつもの悪条件の中、経営を手放したくなる気持ちになって当然かもしれない。
一方で、こうした時代だからこそ急いで事業を拡大したい、新規事業も成功させたいとする積極勝ち組も存在する。これらがうまく出会って事業を譲りたい、買収したいという気持ちが実を結ぶとM&A(企業の合併・買収)ということになる。最近はM&Aの仲介を専業にする会社も出てきてはいるが、問題は仲立ちをする業者が仲人口で良いことを言い立て、高値で交渉をまとめようとすることではないか。それが売り手の募集に役立ち、また自らの利益率向上をもたらすことではあろうが、行き過ぎるとM&A業界の信用失墜にかかわることになる。そうすると、建設業を始めM&Aに将来を託したい企業の意欲を損なうであろう。従って、例えば買収して数年以内に隠れていた瑕疵(かし)が見つかれば、その保証のできる保険や、買い手、M&A仲介者に対する欺瞞(ぎまん)行為の弁償、刑事罰など、まだまだこの業務に対する信頼を確保する方策、立法が遅れている。多くは高い買い物をした買い手が泣いているということか。
これらの改善に時間がかかるとすると、これから拡大必至と思われる建設業界のM&Aを発展させるため、建設専門の公正なM&A仲介会社を立ち上げるなど、業界周辺の自主努力が望まれる。 (三)
残り50%掲載日: 2020年7月2日 | presented by 建設通信新聞