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  • 建設論評・残業を減らすには

     政府が掲げる働き方改革では、長時間労働の上限規制、ずばり残業を減らすことが職場の喫緊の課題である。

     

     その残業を減らすにはどうすべきか。これを大きな社会的な枠組みと、個々の職場の問題に大別して考えてみたい。

     

     まず、建設の世界にはびこる工期至上主義を挙げよう。とにかく、わが国の工期厳守の徹底ぶりは際立っている。

     

     工期を間に合わせるために少々の瑕疵(かし)はともかく、品質を厳守しようとして工期を遅らせることはあまり聞かない。

     

     だから、工期を間に合わせるために残業、休日勤務、深夜勤の突貫工事を重ねる。その結果として、足を出した工事費を支払ってもらえる期待が出てくるのである。

     

     不測の事態が起きると、現場はまず工期を取り戻して間に合わせる対策を立てる。かかる費用は二の次である。つまり、工期が必ず品質や価格よりも優先されるのである。

     

     これはわが国特有の風潮のようだ。外国の建設現場では、不測の事態が起きると、現場はまず発注者に対して工期が遅れる口実を考えて正当化しようとする。

     

     だから、日本の建設会社が海外の工事現場で、何事によらず工事を急がせる態度を現地人たちは理解できないようだ。日本人の監督員や作業員が最初に覚えるカタコトの怪しげな現地語は決まって「急げ」である。

     

     韓国では「パルリパルリ」、中国では「クワイクワイ」、インドネシアでは「チパッチパッ」などと怒鳴り散らす日本人に、彼らは呆(あき)れた表情をあらわにする。

     

     わが国の建設工事現場に定着している工期至上主義は、工期を決める発注者が認識を変えない限り変わらない。残業も減らない。

     

     だから働き方改革を掲げる政府は、発注者に対して適正な工期の設定を徹底させることに意を注いでほしいものである。

     

     その上で、職場で講じるべき方策を考えてみる。

     

     第1に、上司の意識改革である。「いまの若い連中は、俺たちが若いころより楽をしている」と批判して、部下を過重勤務に追い込む上司の守旧的な意識を払拭(ふっしょく)しなければならない。

     

     第2に、勤務に付随する責任の曖昧(あいまい)さの是正である。上司は部下に対して、与える仕事の内容と定時内勤務を前提にした完成日をその都度、明確に伝えた上で的確な勤務管理を行う必要がある。

     

     第3に、勤務評価方法の確立である。直接的な労働は歩掛りなどで評価管理されるのに、調査、監督、計画などの勤務には、客観性と説得力のある方法がない。その結果、効率的な短時間勤務よりも冗長な長時間勤務が、評価につながる傾向がある。

     

     第4に、労働負荷の不均衡是正である。特定の勤勉者に仕事が集中すると、勤務時間は長くなる。

     

     第5に、同調圧力の払拭である。同調圧力とは、職場を支配する空気のことである。みんなが残業していると付き合い残業になる。

     

     残業を減らすには、大きな枠組みにおける改革と個々の職場での改革が必要ということがわかる。それは、制度改革に加えて意識改革にも及ぶ。

     

     一筋縄ではいかない奥深さがあることを、認識する必要があるのだ。(小)

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    掲載日: 2020年7月15日 | presented by 建設通信新聞

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