当サイトについて 採用ご担当者様
会員登録はこちら 求人検索

建設技術者向けNEWS

建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!

  • 建設論評・シニアの活躍

     人口減少が続く中、働く人の数は逆に増えている。生産年齢人口はこの20年で約1割のペースで減少してきたが、近年は女性と高齢者の労働参加がそれを上回っているからだ。頭打ちは近いものの、就業者数は過去最高だった1997年の6557万人をことし中に超える見通しである。

     

     既に65歳以上の層の就業率は、主要先進国で最も高い水準にあり、生産年齢にある女性の就業率もそん色ない水準に近付いている。働く高齢者は年々増加して770万人となり、全就業者数に対する割合は11.9%(2016年)に達している。

     

     増える高齢就業者をもっと生かせるのではないか。雇用形態別にみると、役員を除く雇用者のうち非正規で働く高齢者は75%を占め、その7割がパート・アルバイトである。現在の職に「専門的な技能等を生かせるから」という理由で就いた割合は10%台半ばで、技術や経験を生かすには至っていない。

     

     人手不足に苦しむ建設業の工事管理や設計部門を見てみよう。多くは60歳で退職金を得て職位から離れ、5年以内にほとんどが会社を離れる。その間、フルタイムジョブで技術を生かしても、給与は容赦なく減額されるのが現実である。年金支給開始年齢引き上げの始まった当時と会社の考え方が変わらないなら、働く側の意欲も上がらない。

     

     60歳超のシニアには隠居意識を強いているのかもしれない。シニアの活躍する全体像、すなわち目標のイメージとそれを実現する手立てを示すことができれば、意識も働き方もきっと変わる。その姿は当人たちに見つけてほしいが、彼らの多くは一括採用から定年までワンセットの終身雇用制の中で仕事をしてきた。まずは会社側の考えを求めるのが現実的である。

     

     シニアを新戦力とみれば、職場に配置する際の観点は3つある。1つは経験や人脈、ことを円滑に運ぶために人を説得するスキルなどの業務知識、2つ目は休みや頑張り方などのワークライフバランスに関する価値観。前者は若手との共有や引き継ぎが職場の地力を増し、後者は世代間の考え方の隔たりが対立を生みやすい。3つ目はシニアという立場に潜む格差であり、これは労使双方で考えていくものだろう。

     

     つまりシニアとは、若年層とは異なるスキルと価値観に立場も併せ持って、職場に多様性をもたらす存在にほかならない。個人のそうした側面と職場とのマッチングが配置のかぎとなるが、そのためには本人の自覚に加え、定年前の準備など会社の計画的な支援が必要である。

     

     また、休みに対する意識差の活用、処遇や制度面の充実などの工夫は努力次第だ。例えば、短時間労働者に対する社会保険適用は、「都合のいい時間に働きたい」シニアにとって魅力になる。ノー残業デーの実施がせいぜいという現場では、若年層が休みをシニアとの交代制で取得するなど、課題の週休2日に手が届くかもしれない。

     

     そうした環境の整備は一朝一夕にできあがるものではないが、目標と手順さえ明確なら、シニアの活躍はやがて当たり前になるだろう。活躍を引き出すのは仕組みづくりである。(東)

    残り50%
    ログインして続きを読む 会員でない方はこちらよりご登録ください

    掲載日: 2018年2月1日 | presented by 建設通信新聞

前の記事記事一覧次の記事