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カナリヤ通信・第49号/新型コロナと働き方
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【社会的要請は時々刻々/環境変化はビジネスチャンス/遠隔事務所やワーケーションも】
新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、建設業界でも多様な働き方が急速に広がった。もともと建設業界は、現場にプレハブ事務所を建設して仕事を進める「テレワーク」型の産業だが、設計や営業、管理などの部門でも在宅勤務を含むテレワークが進んだ。今後も感染拡大の状況に応じて、働き方に対する社会的要請は時々刻々と変化を続けるだろう。
■仕事と家庭の境界線
「実はいま、バルコニーから電話しているんです」。この広報担当者は、緊急事態宣言中に夫婦そろっての在宅勤務となった。ダイニングテーブルで向かい合う形でノートパソコンを開くが、電話する場合は離席するという暗黙のルールが定着した。
ビデオ会議の場合は寝室を使う。ただ、寝室にはデスクやいすがないため一定の工夫が必要だという。「ビデオ会議の背景に、ベッドや枕を映すわけにはいかない」。ダイニングチェアも長時間座って仕事をするには適していない。「オフィスチェアの機能の高さを改めて知ることになった」という。
新型コロナ対策に伴う急ごしらえのため、「会社側の制度整備、家庭内の環境整備、その双方が追いつかないまま否応なしに在宅勤務が始まった」と指摘する声は多い。「働き方改革」は従来のような緩やかな掛け声ではなく、半ば強制的に進んだ。手探りの在宅勤務によって、仕事と家庭の境界線は揺らぐ。
■出生率と不公平感
社員の出社率抑制が社会的要請となる中、業務現場では実際に何が起こったか。あるゼネコンの営業部門では、「土木部門に比べ、建築部門での出社率が高い」といった現象が見られた。民間顧客が主体の建築部門では、顧客とのパイプが生命線となるため在宅勤務では難しい仕事があるのも事実だ。
一方、出社率の抑制に向けた旗振り役は総務や人事などの管理部門だが、「他部署には要請しておきながら、自らの在宅勤務はなかなか難しい」という現実に向き合うことになった。
テレワークによるコミュニケーションの希薄化を懸念する見方は多い。しかし、あるゼネコンの管理職はビデオ会議について、「いつも積極的に発言する部下がおとなしくなったり、その逆のパターンもある。新たな執務環境は、何かを引き出したり、見いだすきっかけになるかもしれない」と感じている。
もちろん、すべての部署で在宅勤務が可能なわけではない。このため、どうしても不公平感がついてまわる。特に施工部門だ。建設現場に携わる社員の在宅勤務は難しい。「現場に設置したカメラやセンサーなどのICTを駆使すれば、在宅での現場管理も可能ではないか」といった希望的観測もあるが、そこまで高精度な技術はコストとの兼ね合いから導入が進んでいない。
あるトンネル技術者は、「AI(人工知能)やセンサーなど、便利な道具はこれからもたくさん出てくるだろうが、最終的に人間の五感に勝るものはない」と言い切る。「われわれは岩肌を相手に仕事をしているが、その顔色、声色、触感、臭い、雰囲気の変化など、多岐にわたる情報を一瞬で察知して対策を判断できるのは人間だけ。センサーなどいくらあっても足りない」。施工部門では「現場」「現物」「現実」の「3現主義」が根強く、実際にそれが施工品質を支えている側面が大きい。
■遺失と創出
われわれの仕事や生活を足元から覆しつつある新型コロナウイルスだが、縮小が見込まれる市場と拡大が期待される市場とがある。
関東地方で計画中の再開発事業では、当初予定していたホテルの計画を中止し、施設規模を縮小することにした。事業の採算面も含めて大きな変更であり、苦渋の選択だったという。
一方、フットワークの軽い大手IT企業は、緊急事態宣言が出る前に東京都内の別館オフィスの廃止を決めている。いまや大手企業でさえ動き出したオフィス縮小の流れ、空室率の上昇傾向は決して楽観できない。
しかし大きな環境変化には、新たなビジネスチャンスが潜んでいる。働き方の変化に着目したビジネスも数多く台頭してきた。オフィス床を提供する不動産会社は、これまでも働き方改革を視野に入れたさまざまな提案を展開してきたが、ここにきてスピード感を高め、矢継ぎ早に新たな企画を打ち出している。
在宅勤務を快適化する間取りやアイテムの開発も相次ぐ。マンションのウォークインクローゼットを書斎に改修するプランや、居室内に置く専用ブースさえ台頭している。ただ、「在宅勤務で社員の家庭に負担をかけ続けるわけにはいかない。今後、サテライトオフィスの確保が課題になるだろう」と予測するゼネコンがあるように、勤務地の選択肢を多様化させる取り組みが加速しそうだ。サテライトオフィスやシェアオフィスのほかにも、地方部での「ワーケーション」(ワークとバケーションの造語)など、そのラインアップは充実しつつある。
「顧客ニーズの把握には、自社内での多様な働き方の経験が役立つ」として不動産各社は自社オフィスを働き方改革の実証実験フィールドとしてさまざまな取り組みを試行導入してきた。今後、働き方改革の市場開拓が一気に進みそうだ。
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残り50%掲載日: 2020年7月30日 | presented by 建設通信新聞