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  • 団体、会員説明に苦慮/キャリアアップ財源問題

     システム稼働に伴う膨大な累積赤字に端を発した、建設キャリアアップシステムの財源問題が混迷を深めている。システム運営を指導・監督する立場にある国土交通省からの改善提案が二転三転したことで、システムユーザーの建設業団体は会員企業・傘下団体への説明に追われ、使用料金の引き上げなどに対する合意形成もままならない状況だ。開発費の追加負担にも影響を及ぼしかねない中で、利用者と運営者が見いだす合意点に注目が集まる。

     

     6月に開かれた建設キャリアアップシステム運営協議会・運営委員会で、「加入者が増えれば増えるほど、赤字が拡大する」料金体系に起因して累積赤字が56億円に達し、2020年度末にはそれが100億円を超えるとのシステム運営の危機的状況が初めて報告された。

     

     そこで国交省と建設業振興基金が示した解決策は、技能者登録料を2500円から4000円、事業者登録料を現行の5倍、現場利用料を3円から6円にそれぞれ引き上げる料金体系と、20億円に上る開発費の追加負担だった。

     

     寝耳に水の提案に、団体側は「料金値上げが加入のブレーキになる」「まずは運営費用のコストカットが先。コストカット案が示されないと、(引き上げは)到底了承できない」などと反発を強めた。また、「建設業振興基金の執行体制に問題があるのではないか」とし、国交省の指導監督責任を追及。「国費で対応すべき」との声も上がった。

     

     利用者と運営者が相容れるのは難しいとみられたものの、システム運営の悪化によってもたらされた逆境は、奇しくも建設技能者の処遇改善というシステムの目的・意義を見つめ直す契機となり、「システムを止めるわけにいかない。存続する上で料金改定はやむを得ない」と団体側の強硬姿勢は次第に軟化していった。

     

     国交省側は運営悪化の責任を認めつつも、「民間主導のシステムのため、国費を投入することは難しい」と団体側に理解と協力を求めた。一方で、「技能者のニーズを踏まえて登録内容などを見直し、料金引き上げを抑制しては」という団体側の建設的な提案には呼応する。

     

     7月7日の同運営協議会・運営委員会で、国交省は簡易型登録料(2500円)と詳細型登録料で構成する2段階登録方式を提示。登録料の一律負担から転換し、審査コストを圧縮する。それ以外の料金改定案(事業者登録2倍、現場利用料10円、ID利用料月額換算200円から800円)も明らかにした。

     

     さらに同31日の会合では、「利用料金を引き上げても登録数が増えていくという試算の根拠が明確になっていない」との団体側の指摘を踏まえ、意思決定体制の強化に伴う財源問題の再発防止を前提に、▽登録促進とカードリーダーの設置・カードタッチの徹底▽団体ごとの登録数・タッチ数などに関する目標設定--の申し合わせを要請。また、詳細型登録料は4000円に設定すると報告した。

     

     団体側の提案を反映した料金改定の最終案が固まったことで、容認の機運が高まっていたが、合意の場となるはずだった7日の同運営協議会・総会が突如延期。代わりに詳細型登録料を4900円に、ID利用料を950円にする修正案が出され、団体側は再び困惑する。

     

     困惑の理由はシステム維持に向け「(修正案を)最終的に認めざるを得ないかもしれないが、会員に再度説明し、理解してもらうのは簡単ではない」(ある団体の役員)ことにある。また、10月の料金改定に合わせ「ぎりぎりの調整の結果ならば仕方ないが、試算の甘さが要因だとしたら、会員の不信感はより高まりかねない」と危惧(きぐ)する。

     

     不信感の増大は料金引き上げだけでなく、この先に待つ開発費の追加負担への影響も懸念される。別の団体の幹部が「料金の見直しよりも、出捐の方が合意形成が難しい」と吐露するように、出捐の判断は機関決定事項であるため、しっかりとした試算に基づいているという“数字の信頼性”が前提になければ、議論すら進められないからだ。

     

     修正案には、コールセンターの廃止などによる今後10年で70億円の経費削減、開発費追加負担の20億円から16億円への圧縮も盛り込む。

     

     混沌とする建設キャリアアップシステムの財源問題。料金改定と追加出捐に対する最適解を、利用者と運営者で模索する。

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    掲載日: 2020年8月17日 | presented by 建設通信新聞

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