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就任インタビュー/国土交通省事務次官 栗田 卓也氏/コロナ踏まえデジタル化加速/まちの「集積」維持、「過密」は解消
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>国土交通省の栗田卓也事務次官は19日、日刊建設通信新聞社など建設専門各紙との就任インタビューに応じた。現下の新型コロナウイルス感染症を踏まえた今後のあり方について、「生活様式はいわゆる“ニューノーマル”として変えていくべきだが、そのことにかかわらず進めていかなければいけない事柄もある。災害から国民の命と暮らしを守る、わが国の経済成長を支えるといった大きな役割を担っている社会資本整備は継続的・計画的に取り組んでいかなければいけない」とその必要性を強調した。
「社会資本整備に関連して言うと、i-Constructionや測量でのドローン活用、AI(人工知能)による構造物診断などデジタライゼーションは感染症対策につながる。デジタル化、スマート化を進めていくことは、感染症の対応下でスピードアップしていく領域だ」とした。
アフターコロナ時代のまちづくりについては、「大都市のあり方をこれからどう考えていくのか」との視点を示し、「過剰な密は避けながらも、イノベーションの観点から都市への集積は引き続き重要だ」という認識を示した。「『都市』は人類最高の発明の1つとも言われるが、人やモノの集積を通じて効率性を維持しながら、多様性が交わるイノベーションの創造の場だ。この役割がなくなる、あるいは変質することはない」
他方で「感染症の有無にかかわらず、満員電車や交通渋滞など過密に伴う弊害を解消することは必要だ。維持すべき都市の集積のメリットは発揮しながら、周辺に生じている問題についてはコロナ危機を1つのバネにして政策の展開を図っていく」と展望する。
対応すべき課題は新型コロナウイルス感染症だけではない。ことしも2020年7月豪雨によって、九州から東北の広範囲に被害が発生した。「19年の房総半島台風(台風15号)、東日本台風(台風19号)、18年の西日本豪雨など近年の気候変動の影響で、これまでと次元が異なる自然災害が相次いで発生している。防災・減災、国土強靱化は喫緊の最重要課題の1つだ」と述べた。
国交省の防災・減災対策本部が7月に示した取りまとめでは、“流域治水”への転換や防災・減災の主流化といった施策を提示した。加えて、「骨太の方針2020」には3か年緊急対策後も中長期的視点に立って具体的KPI(重要業績評価指標)目標を掲げて計画的に取り組むために、国土強靱化基本計画に基づいて、災害に屈しない国土づくりを進めることを盛り込んだ。
「与党プロセスの中で議論を重ねてもらい、昨年よりもこの部分の記載が充実された。7月に豪雨があったが、台風シーズンはまだこれからだ。ことしの出水期から必要な施策を速やかに実施するとともに、骨太の方針の記載も踏まえ、中長期的な視点で必要・十分な予算を確保し、ハード・ソフトの施策を総動員して防災・減災、インフラの老朽化対策を着実に進めていく」と力を込めた。
社会資本整備やまちづくりを担う建設業については、「国民生活、社会経済を支え、災害時には最前線で地域の安全・安心の確保を担う地域の守り手としての役割が今後も変わることがないと思っている」と期待を示す。
「総合政策局担当の官房審議官時代に社会資本整備重点計画の更新作業に当たっていた時、初めて重点計画の中に建設産業を明確な位置付けをもって書き込んだ。社会資本自体が国土のインフラであると同時に、それを支える建設業という産業とそれに従事している方々も大事な“インフラ”だという認識を、重点計画の中に強い動機を持って位置付けたことを記憶している」と振り返った。
一方で、高齢化など課題が山積しているとの認識を示し、若年入職者の確保の必要性に言及した。昨年6月に成立した新・担い手3法や公共工事設計労務単価の引き上げ、社会保険への加入の徹底、建設キャリアアップシステムの普及促進など処遇改善につながる取り組みを示しながら、「若者が働きやすくてやりがいを持って仕事ができるような労働環境を整備するとともに、女性の定着促進に向けた取り組み、建設業の魅力を積極的に発信することが大事だ」とまとめた。
残り50%掲載日: 2020年8月21日 | presented by 建設通信新聞