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  • 建設論評・潜むリスク

     新型コロナウイルスが人々の心に暗雲を広げている。その拡大は収まる気配を見せずに人々に重くのしかかる。さらに過去に例のない豪雨の発生や、過去最高の気温を各地で観測するなど厳しい日常が続いている。もうそろそろ何か良いことがあってもよいのではないかと思いたい気持ちをあえて否定したい。

     

     われわれを取り巻くさまざまなリスクは何一つ減ってはいないからである。梅雨の豪雨で多くの方々が被災し、その片付けさえ終わってないものの、本格的な台風シーズンはこれから始まる。大雨だけではなく防風への備えも忘れてはならない。

     

     個別の対策もさることながら、街のあり方を見据えた長期的な防災対策が必要である。ハザードマップと連携した都市計画や用途地域の再設定も必要ではないだろうか。開発申請に安易に許可を出すのではなく、リスクの高い地域にはできるだけ建設を控える配慮が有効な方法といえる。災害のたびに問題になる避難情報の遅れや、連絡方法ももっとタイムリーに、そして確実に伝わる方法をAI(人工知能)の活用など情報技術を駆使して追求すべきである。

     

     最近目にした言葉に「道経一体経営」がある。道徳と経済を一体とした経営を推奨している。利益の追求ではなく人のために何ができるかを第一に考えることが、本来の経営であり成功を収める企業になり得るとしている。詳細は個別に調べていただくとして、防災対策における企業の姿勢に示唆的な言葉である。

     

     国や地方自治体の防災に対する取り組み方の変革を進めるとともに、民間の防災に対する姿勢も改めるべきことがある。自らの仕事によって多くの人々のためになることが本来の目的であり、どうすれば人のためになれるかを考え続けるのが「仕事をする」ということである。少なくとも社会の信頼を集める設計者や技術者やゼネコンであれば、法律や基準への適合だけではなく、現実的に災害のリスクがないかを事前に十分に検討すべきではないだろうか。さらに言えば国や自治体以上の情報収集や分析能力で、独自の安全基準をつくり防災を追求する姿勢を見せることも大切である。

     

     企業規模が大きくなるほど社会貢献や人々のために力を尽くすべきなのに、利益の追求にばかりに力を集中する。これは「道経一体経営」では正しい経営とは言えず、そのような企業はやがて衰退していくとまで述べている。

     

     新型コロナウイルスで社会が大きく混乱し、考え方や働き方さえも変わろうとしているこの時期に、働くことの目的や企業のあり方を考えてみるのも良いかもしれない。

     

     ともあれ、地震や噴火や台風、さらに酷暑や洪水や新型感染症など、われわれを取り巻くリスクは増える一方である。建築や街づくりはそんな人々の安全や生活を支えるために大きな役割を担っている。人のために仕事をする意義を自覚して、力を尽くしたいものである。(泰)

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    掲載日: 2020年8月26日 | presented by 建設通信新聞

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