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フォーカス・災害対応の課題 建コン協まとめ
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【支援活動に集中も手持ち業務増大】
広域で同時多発的に河川や内水氾濫による浸水被害、土砂災害が発生した2019年の台風19号豪雨災害。その発災直後から災害復旧のすべてのプロセスに関与し、重要な役割を果たした建設コンサルタントの活動記録から浮かび上がる課題の数々は、今後も頻発・激甚化することが予測される風水害に対処していく上での貴重な教訓となる。
◆規模・内容分からず要請に応募なし
建設コンサルタンツ協会(高野登会長)がまとめた同台風災害の活動記録では、東北、関東、北陸の各支部での支援活動とともに、実際の現場でどういった活動に取り組んでいるのかを分かりやすくイメージできるよう河川、土砂、道路の災害個所別に活動状況を整理して紹介している。
この中で、特に被災個所数が膨大だった宮城県内自治体の災害対応では、東北支部に支援要請の協力依頼があり、地元の宮城県測量設計業協会と合同で2000件近い災害査定に対応した。県は10月末までに査定図書作成の簡素化を通知。既存業務の一時中止命令などの通知も、11月初めまでに国土交通省東北地方整備局管内の事務所、東北6県、仙台市のすべてに出された。
こうした対応により、災害業務に集中できるようになった一方で、工期が年度を繰り越すことで手持ちの業務件数が増大。新年度の新規業務への応募時に、手持ち業務制限に対する課題も発生した。
同支部では、今後の災害査定に対し、今回の簡素化措置などを含む災害対応の記録を残す必要があることや、発災初期の段階で被災状況を迅速に把握する体制を発注者と建コン協で整える必要性を指摘。これにより次の調査に必要な班編成や協力を依頼する会員企業の選択が容易になるとしている。
一方、関東支部では神奈川県や千葉県など自治体から計25件の要請に対応したが、会員企業からの応募がなく協力要請に応えられなかった案件も2件発生した。その要因について、自治体からの要請内容で業務規模や技術的難易度がつかみ切れない、業務規模が大きい、業務内容が広範囲であるなどの傾向が見られると指摘。今後、会員企業が参加可否を判断しやすいよう要請書のサンプル(好事例)を作成し、自治体にあらかじめ配布するなど、要請を受けてから速やかに会員企業を紹介できるよう取り組む。
また、栃木県や茨城県からの協力要請がなかったことなど、災害の規模の割には要請が少なかったことにも言及。改正品確法に基づき、支部として新たな自治体との災害協定の新規締結や災害協定の一部見直しとその周知など、各自治体との協議を順次進めていく意向を示している。
このほか、災害対応時の残業時間の増加も課題に挙げた。労働基準法第33条の適用状況も含め、協会として残業の実態調査による労働環境の問題把握や関係各機関との協議を必要に応じて実施すべきだと提起している。
北陸支部は、地質調査業協会、測量設計業協会との3者で北陸地方整備局との災害協定を締結。同支部が3者を代表した要請窓口を担っている。今回の災害支援要請では、初めて測量設計業協会への要請を北陸支部が受けて対応したが、要請規模が大きかったことも含め体制構築に時間を要したことから、他協会を含めたより円滑な連絡体制の構築や、北陸支部包括区域以外で発生した際の他支部の連絡窓口の明確化という課題が明らかになったとしている。
災害別にみた課題では、特に河川災害について、今回のように規模が大きく、内水・外水が同時に発生している出水では、浸水要因の把握が難しく、氾濫ボリュームの推定などが十分把握できない。また、破堤氾濫時が夜間だったこと、水位計の流失によって氾濫諸元や推定流量などの基礎情報が十分でなかったことを列挙。これらをもれなく取得するための観測体制、取得したデータを用いた発災前から発災後の水位予測、浸水予測情報の充実が必要だと指摘している。
土砂災害では発災後、現地調査に急行する際に道路損壊や倒木などにより困難を極める場合があり、重機などを保有する建設業者との連携や情報共有が重要とした。道路災害では事前の通行規制により2次災害を防ぐ予防保全的な対応や、発災後の速やかな道路啓開を実施するため、民間企業などとの災害協定の締結や道路管理者間の協議会による啓開体制の推進などが必要だとしている。
残り50%掲載日: 2020年8月26日 | presented by 建設通信新聞