建設技術者向けNEWS
建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!
-
素材NOW・ナカ工業「抗ウイルス性樹脂手すり」
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【手すりからの感染を予防/ウイルスの99%以上が不活化】
「人の支えになりたい、その思いで作った手すりを安心して使ってもらいたい。手すりを使ったことでウイルスに感染してしまう人を1人でも減らしたい」--。こうしたコーポレートメッセージを掲げる建材メーカーのナカ工業(東京都台東区、佐久間克行社長)は、主力の樹脂製歩行補助手すり・動作補助手すりの素材となる樹脂に、特殊な触媒を練り込んだ「抗ウイルス性樹脂手すり」など、抗菌と抗ウイルス性能を備えた製品の販売を強化している。
◆都庁舎を始め導入広がる
細菌とウイルスは、どちらも人に感染症を引き起こすものだが、その特徴は異なる。細菌は小さな生き物で、えさとなる栄養と一定の環境が整えば、自分と同じ細胞をコピーして増殖する。一方、ウイルスは細菌よりも大きさが50分の1程度と小さく、一般的に生物には分類されない。遺伝子とそれを包むタンパク質の殻で構成する粒子であり、細胞が存在しないため、自ら増殖することはできない。そのため他の生きた細胞に寄生して増殖する。ウイルス性の風邪やインフルエンザウイルス、コロナウイルス、ノロウイルスなどが有名だ。
同社が抗ウイルス性能を持つ手すりの開発に着手したのは2002年夏。国際ウイルス命名委員会によって「ノロウイルス」という名称が決まり、世界で統一して用いられるようになったころで、食中毒の中でもノロウイルスに対する関心が高まっていた。そのころから同社には、病院など医療機関から手すりの抗ウイルス対策についての問い合わせが多く寄せられていた。
加えて、日本では毎年インフルエンザなどのウイルス性感染症が季節ごとに流行することから、医療機関や福祉施設、空港、学校などが感染予防に強い関心を寄せていることに着目し、抗ウイルス製品の開発を始めた。
当時からすでに手すりには抗菌性能があったが、ウイルスに対しては効果がなく、別の研究が必要だった。同社の開発者は「手すりの素材となる樹脂に練り込む特殊な触媒は、抗菌と抗ウイルスでまったく異なる。樹脂との相性を見ながら高い抗ウイルス効果を持たせるにはどうしたら良いか、また手すりの変色や持続性、コストパフォーマンスなどさまざまな角度から検証が必要だった」と振り返る。
試行錯誤を繰り返し、数年にわたる研究の末、抗ウイルス性樹脂手すりの開発に成功し、16年6月に発売した。
同製品は、樹脂そのものに特殊な触媒を練り込み、抗菌性能に加え抗ウイルス性能を発揮するものだ。
特徴的なことは、インフルエンザウイルスやノロウイルスにも対応し、手すりに付着したウイルスが8時間後には99%以上不活化されることにある。この効果は、抗ウイルスの専門機関での試験により実証されており、同社は「長期にわたり効果が持続する安全で安心できる製品だ」と強調する。
抗ウイルス性樹脂手すりは、表面に触れたウイルスに反応し、その増殖を抑え、数を減らしていく。ただ、手すりの表面が汚れていると抗ウイルス効果が十分に発揮できないため、普段の手入れが大切になる。基本的には柔らかい布でから拭きすればよいが、汚れがひどいときは、中性洗剤が1-2%の水溶液に布を浸し、よく絞ってから軽く拭き取ればよい。
設置個所は、東京都庁舎を始め医療機関や高齢者施設、多くの人が利用する公共施設や交通施設へと広がっている。ウイルスが付着した手でさわられた手すりを介して感染が広がることを妨げる効果がある。
同社は「人の手に触れるものは手すりだけではない」とし、今後もこの技術を応用し、さまざまな分野に応用できるよう、より多くのアイテムに抗ウイルス性能を持たせていく考えだ。抗ウイルス剤そのものを製造し、他の材質などへも展開する方針だ。現在その準備を進めている。
残り50%掲載日: 2020年9月4日 | presented by 建設通信新聞