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  • 台風10号で新洪水対策始動/九州管内40利水ダムを事前放流/所管越え緊急的に統一運用

     6日から7日にかけて九州地方に最接近した大型で非常に強い台風10号に対し、新たな洪水対策が九州と四国地方で始動。これまで治水という目的を持っていなかったため、水害対策に活用することが難しかった利水ダムの事前放流に踏み切った。政府が2018年の西日本豪雨、19年の台風19号を教訓に、緊急時には利水ダムでも多目的ダムと同じような治水対応ができる統一運用体制をことし6月にスタートさせていたことから実現した。

     

     今回、九州地方で台風による豪雨が予想されるため、ダムの水を事前に抜いて雨水をダムでため込む、ダムの洪水調節機能を使った多目的ダムと利水ダムは、1級・2級水系合わせて62ダム。このうち利水ダムは40ダムに達した。実際の統一運用をけん引した国土交通省九州地方整備局によると「(利水ダムの)事前放流は4日、5日がピークだった」という。

     

     四国地方でも利水ダムの事前放流に踏み切った。四国整備局によれば、ダム洪水調節機能を使った多目的ダム4ダムに対し事前放流をした利水ダムは8ダムに上った。事前放流には河川管理者の国交省が責任を持ち、統一運用した。

     

     利水ダムでも豪雨が予想される緊急時に、多目的ダムと同じように洪水調節機能として事前放流をして貯水容量を高める運用を始めたことで、これまでの多目的ダムの洪水調節容量45億8900万m3に加え、新たに45億4300万m3の洪水対策容量が追加される。これは八ッ場ダム50個分に相当する。今後、今回の事前放流による効果検証なども必要となる。

     

     ダムは大きく分けて、治水や利水などさまざまな目的を持った「多目的ダム」と、発電や農業、上水、工業用水など治水目的以外の利水だけを目的にした「利水ダム」の2タイプがある。

     

     全国に109ある1級水系に立地するダム数は955。このうち「多目的ダム」は335、残り620は利水ダムだが、政府が洪水対策の統一運用を決めるまでは、利水ダムでの水害対策は事実上できなかった。2級水系を含めると全国には1460ダムある。

     

     政府は、昨年10月の台風19号後、「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」を設置。昨年末に緊急時には利水ダムを含めすべてのダムを水害対策に使えることを柱にした基本方針を決定した。ことし4月には国交省が「事前放流ガイドライン」を策定。6月から水害対策機能がある多目的ダムと、治水目的がない利水ダムを、水害が予想される緊急時に統一的に運用する新たな枠組みがスタートしていた。

     

     仮に事前放流が空振り(予想された雨量がなかった)で利水ダムが水不足となった場合、利水者には補償を行うことも盛り込まれていることから、より精度を高めるためにAI(人工知能)活用なども進めていく。

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    掲載日: 2020年9月8日 | presented by 建設通信新聞

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