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連載・誤算の行方・CCUS財源問題(上)処遇改善へ業界定着とシステム安定の道模索/綱渡りの運営続く/変更重なり信頼感低下
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>国土交通省と建設業振興基金、建設業関連団体などで構成する建設キャリアアップシステム運営協議会・総会が8日に開かれ、同システムの利用料金引き上げが決まった。システム稼働に伴う膨大な累積赤字が発端となった財源問題は「開発費用の追加負担(出捐金問題)」を残すものの、料金改定によって運営継続への1つの山場を越え、システム停止という最悪の事態は回避した。ただ、一連の騒動で生じた利用者・運営者間の関係性のひずみは、出捐金問題を含め、システムの安定運営と建設業界への定着にどう影響するのか。綱渡りの運営は今後も続く。
今回の料金改定に関し、建設業団体では「次々と出される変更案が当初の料金改定案から徐々に引き下げられるのであれば、合意形成も図りやすい。逆に引き上げていくという手法が混乱を深めた」との見方が強い。
建設キャリアアップシステムの累積赤字は「加入者が増えるほど赤字が拡大する」料金体系に起因し、2019年4月の本格稼働から1年足らずで56億円に達した。20年度末には100億円を超える見通しとなったため、システム運営を指導監督する立場にある国土交通省と、実際の運営を担う建設業振興基金は打開策を模索。導き出した結論は利用料金の大幅な引き上げと、開発費用の追加負担だった。
国交省は運営責任を認めつつも、「民間主導のシステムのため、赤字解消に国費は投入できない」との姿勢を崩さなかったが、システムの登録促進と安定運営の両立に向け、料金改定案を試行錯誤した。
技能者登録料は当初、現行の2500円から一律4000円に引き上げる方針を示した。その後、「審査する項目を絞り、ステップアップしたい人(技能者)が追加の料金を支払う仕組みにしては」とする団体側の意見を踏まえ、登録情報を本人情報などに限定する簡易型(2500円)と、保有資格や研修受講、表彰履歴などを含むフルパッケージの詳細型で構成する2段階登録方式の導入を提示。事業者登録料(現行の2倍)や現場利用料(3円から10円)、ID利用料(月額換算200円から800円)も変更する方向とした。
団体側は、料金値上げが登録促進の足かせとなりかねないと危惧(きぐ)する一方で、建設技能者の処遇改善を目的とするシステムの意義を勘案し、「同じ轍(てつ)を踏まない」ための建設的な議論を国交省と重ねた。その結果として、「システム存続へ料金改定はやむなし」とする機運が徐々に生まれる。ただ、その裏で多くの団体が会員への説明に追われた。料金改定の必要性がしっかりと理解されなければ、利用者は増えず、持続可能なシステム運営は実現しないからだ。
7月31日に開かれた建設キャリアアップシステム運営協議会・運営委員会では、詳細型の登録料として4000円を見込むことが報告され、改定内容の全容が明らかになった。ある団体の役員は内部の合意形成の過程を考慮して「改定内容をこれ以上変更しないでほしい」と訴え、国交省側は同調した。
料金改定の可否を判断する同運営協議会・総会が8月7日に控えていたため、各団体は料金改定に関する最後の会員への意見聴取と対応方針の決定を急いだ。しかし、総会直前で国交省から開催延期と改定内容の修正が伝えられ、団体内での合意形成の努力は徒労に終わる。
詳細型登録料を4900円、ID登録料を950円へ、さらに引き上げるという修正内容に、別の団体幹部は「国交省がより良い料金体系を確立しようと、苦心しているのは分かる。ただ、あのとき(運営委員会)の約束はなんだったのか」と肩を落とす。
各団体の執行部はコロナ禍の影響で意見集約が難しくなっている状況で、会員に対する説明に再び奔走するものの、料金改定案のたび重なる変更による「数字に対する信頼感の低下」が新たな懸念としてまん延し、総会での合意は難航するかと思われた。
最終的には「技能者の処遇改善に向けた妙策はなく、システムに頼らざるを 得ないのも事実」とする 団体側が歩み寄る形で、「システムを頓挫させない」ために、料金改定は条件付きで合意に至った。
残り50%掲載日: 2020年9月10日 | presented by 建設通信新聞